天と地の間

クライミングに関する記録です。

デポ回収のため小積へ

2012年05月13日 | 開拓
前回、開拓道具を持ち上げた際、あまりの重さに耐えかねて、一部をデポして帰った。その時は、時を置かずに来るつもりであったが、
再び一人で長いアプローチを推して来ようと思うと気が重く、さりとて開拓パートナーがそうそういるわけも無く、長い月日放置した
ままとなった。で、今の状況ではいつ開拓に入れるか目途が立たないため、せめて入梅までには回収しようと、今日、一人で大崩に入
ることにした。


とめる場所に苦労したほどの車の数。

登山口に着くと、登山口前後の路上には多くの車が駐車している。連休以外でこれほどの車を見るのは初めてのことだ。先週の沢も多
くて驚いたが、やはり、ブームなのだろうか。山に入る人が多くなったようだ。

今日は2ピッチ目をどう引くか確認のため、双眼鏡持参だ。登山道沿いの見晴らしの良いところから眺めると、あまりに遠くて詳細には
分からないものの、1ピッチの終了点を少し回り込んだところから、クラックがまっすぐ伸びている様に見て取れる。引くならここか。
しかし、2ピッチの終了点になるあたりの直下がクラックが切れているようで悪そうだ。可能性があればよいのだが。


小積の雄姿


赤線が完成1ピッチ。ピンク線が2~3ピッチの予定ライン。


ルートを確認すると、一路、小積谷へ。
小積基部のガリーを上るとデポを確認できた。中身を確認するとすべて無事だ。だがカビだらけ。放置した月日を感じる。
ザックを背負うとすぐに下山する。今日することはもう何も無い。


1ピッチ50mのクラック。
取り付きより撮影。


フェースに見えるハンガーは、中央稜のライン。



馬の背を登山口近くより撮影。
見る限り弱点がなさそうだ。


馬の背を右から撮影。

気になっている壁がもうひとつある。馬の背だ。正式な呼び名は知らない。馬の背とは地元の人の呼称らしい。
とにかくでかい壁だ。不思議なことに未だに一本のルートも引かれていない。アプローチは3,40分程度と比較的近い。それでもルート
が引かれていないのは、やはり弱点が少ないためだろう。そして、取り付きの悪さ。下部が原生林に覆われて、容易に近づけず、全貌
が分かりにくいのである。唯一、右端のスラブがに取り付きやすい。そこを上れば少しは見渡せるだろう。
私は左のほうにルーフクラックを見つけているが、取り付くのはいつの日だろうか。ショートルートをする人も少なくなっている今日、
ルート開拓をするパートナーがおいそれと見つかるはずも無い。それどころか、小積も馬の背もルートを引いても登りに訪れる人はい
ないだろう。


右の壁は広滝スラブ。左は硯岩。
大崩は壁の宝庫だ。
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春山 「前穂東壁」

2012年05月06日 | 冬山
春に穂高に入るのは、かなり昔に来て以来である。
前回は前穂正面壁の北条-二村ルートを登った。今回の狙いは東壁のDフェース都立大ルート、その他。
パートナーは白きりさん

5月1日(月)
16時、上高地でバスを降りると、様変わりに驚かされる。建物が新しくなり、人が多い。
ここに来るときは、いつも厳冬期、建物は閉鎖されているうえ、素通りするために余計に春と冬のギャップを感じる。とにかく明るい。
そして、便利だ。





まるで街中の様相。


かつて、上高地に入るのに沢渡から歩いたこともある。いまでは坂巻温泉や釜トンの手前から歩くが、上高地にまでバスが上がればこ
れほど楽なことはない。実際、上高地から歩くこと、1時間20分で今日の幕営地、徳沢に
着くことができた。冬であれば半日に行程である。徳沢もまた変わった。蛇口のある水場があり、トイレはきれい、かつ、水洗になっ
ている。さらに驚いたことにお風呂にまではいれる。下界のキャンプ場より環境がよい。



徳沢キャンプ場。


テントを設営後、ビールを買って乾杯。夕食をとっていると雨が降り出してきた。予報から予測はしていたが幸先が悪い。明日は停滞
になりそうだ。

5月2日(火)
一日中、雨が降る。予報を聞くと、東海地方で大雨洪水警報が出たとのこと。こちらに影響がないはずがない。気勢をそがれるがどう
しようもない。結局、ゴロゴロしたり、ロッヂでビールを飲んだりして過ごす。
ロッヂから見ていると、次から次へと横尾や蝶ヶ岳へと向かう登山客が通る。雑誌から抜け出たような出で立ちの山ガールや山ボーイ
も多い。皆一様にストックを両手に持っている。そんな若いときから、平地でそんな杖突いていたらこれから先、どうするのだろうと、
ちょっと心配になったりするが、いらぬ心配か。

5月3日(水)
これほど降り続けば、奥又の沢をつめるのは危険。行くとすれば明け方3時頃から動くしかない。しかし、それには取り付を偵察をしな
ければならにだろうと、奥又白の谷に入ることにした。



奥又白谷末端のデブリを行く。


奥又白の谷をつめる白きりさん。


奥又白池直下にて。


新村橋を渡って、奥又白に入ってもトレースがまったくない。
急登の谷をつめていると、雪の下から水流が聞こえてきたり、亀裂の走った箇所が散見される。微妙な状態だ。
奥又白の池直下から前穂東壁や正面壁が良く望める。ルートを確認していると、B沢上部から小雪崩が2度起きた。
東壁は諦め、正面壁にしたほうがよさそうだ。



C沢とB沢を分けるインゼル。時折、左のB沢上部から
小雪崩が発生。


巨大な氷の塊が落ちてきていた。


登るときにつけたトレース。
帰りは緩んだため、ここは避けることにした。

徳沢―奥又白の池  3時間


テントに戻って一息ついていると、また降り出してきた。予報は各地で大雨警報が出ている。5月では観測史上の総雨量だとか。そして、
長野県では雪崩注意報でた。これほど降れば、奥又に入るのは危険と判断。明日は撤収することに決め、お風呂に入って寝る。

5月4日(木)
朝方まだ降り続いた雨が上がり、薄っすらと青空が見えてきた。このまま諦めきれない。奥又がだめなら、涸沢経由で5,6のコルを越え
て早朝から取り付けば行けるだろうと判断し、涸沢を目指す。



横尾小屋。きれいな建物になっていた。


横尾冬季小屋。冬に来たときに泊まるのはここ。
むろん、冬は無人。


横尾から屏風を撮影。何度訪れただろうか。
最近は厳冬期に登る人は少なくなってきたようだ。


横尾までは40分で順調に進んだが、それからが難儀を強いられた。涸沢に行く人が多いのである。早足で横をすり抜けながら前に出る
とすぐに新手が現れる。これの繰り返しだ。


涸沢途中で。
次から次へと上ってくる人たち。
うかつに小キジもうてない。


涸沢に上がると、テントを立てる場所を探さなければならないほど多くのテントが設営されている。昔はここに長期間
滞在する人たちを涸沢貴族とよんでいたが、今はそういう人たちも少ないだろう。



涸沢ヒュッテ横のテントサイトにて。
すごいテントの数々。手前にもかなり張っている。


北穂へと向かう人たち。


テントを立てるころから、また降り出してきた。雨脚が強い。今日で4日、降られ続けている。何という天気に当たったことだろう。
テントの中にザックを押し込むと、売店へ行き、おでんを食べながらビールを飲む。天気が良ければ最高のひと時であろう。
テントに戻り、夕食を作っていると、周りのテントから笑い声や、会話が聞こえてくる。白きりさんと二人でああいう山行が楽しそう
でうらやましいなあと、こちらの会話。しかし、もう軌道修正は出来ないだろうと、意見は一致。そう。このまま行くしかない。
夜半、雨はやむどころか強風を伴ってきた。そして、明け方に雪へと変わった。

横尾―涸沢 2時間半

5月5日(土)
予備費も使い果たした。これだけ降れば雪崩が心配。明け方からの行動も無理だろうと前穂の壁は諦め、下山することにした。

やはり、天気が悪すぎた。なんという天気だったか。こんな経験はいまだかつてない。5日間、降られればどうしようない。これが冬であ
れば、多少の吹雪なら闘争心もわくし、行動するところであるが雨となればいかんともしがたい。



前穂の壁
中央部の雪がある場所まで行ったのだが。
帰るときにやっと晴れてきた。


後姿の私。
ザックの重さは冬とさして変わらない。
登攀用具が重い。


涸沢・・・・・・・・・・横尾・・・・・・徳沢・・・・・・・明神・・・・・・・上高地 
   1時間20分    30分     30分      30分

大分着:22時48分




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