由布川渓谷から帰って、3日日ほどして白きりさんから電話あり。
完全遡行を是非ともやり遂げたいが、もう寒いだろう。来年のことはわからんけど、来年に持ち越しということで話は終わった。それ
から2、3日経って、「来年のことはわからんな」という言葉が気になり始めた。そう、「俺たちに来年はない」かもしれない。やりた
いという気持ちがあるうちに行ったほうが良いのでは。と思い立ち、白きりさんに電話すると、白きりさんも同じ考えだったようで、
よし。やろうという返事。予定を10月23日としたが、金曜日にかなりの雨が降った。大雨洪水注意報もでた。これでは当然無理。翌週
は白きりさんが大阪マラソン参加のため無理。ということで11月3日木曜日、文化の日に行くことにした。しかし、11月に入ってからの
遡行は寒さがこたえるだろうことは、容易に想像できる。下手をすると「俺たちには明日は無い」という状況にもなりかれない。寒さ
対策を入念にする必要がある。しかし、水の中で寒さ対策といってもどういうものがあるのだろうか。水の中での防寒には限りがある
だろう。結局のところ、酒を控え、節制をするのが一番かもしれない。
11月2日。
朝から小雨がぱらつく。逃げ場の無い由布川渓谷。心配になったが、終始小雨。この程度の雨なら行けるだろうと決行とし、由布川渓
谷近くのキャンプ場「きのこの森」へと向かう。9時前到着。皆がまだ来ていないので、温泉に入った後、バンガローでビールを飲んで
いると、ますもちゃんが到着。飲もうと誘うと、今日は明日のために飲まないという。心がけが違う。
10時過ぎ、しろきりさん到着。こちらはビールと焼酎を抱えている。明日のために、この辺でと思っていたのであるが付き合うことに
する。結局、寝たのは12時を回っていたか。節制を念頭に入れていたのだが。
明けて文化の日。
どんよりとした曇り。予定では6時30起床であったが、遅く寝たのがひびいた。車を二箇所に配車した後、由布川神社先の階段を下りて
入渓したのは9時15分。水量は前回よりも若干多いようだ。しかし、気温は前回よりも暖かいようで安心する。
入系直後。
もっとも穏やかな流れの箇所。
ここからは水質は良い。人造物の残骸も無くなり遡行の環境はぐっと良くなる。懸念であった鹿の死体も流されてない。一安心だ。
狭いところに来ると、暗い。
フラッシュをたかなければブレるし、たけば水滴が写る。
撮影は難しい。
40分ほどで、みこやしきの滝の下部へ到着。
前回、残置ハーケンにヌンチャクをかける際、苦労した箇所は1発で掛ける事ができた。やはり、水量が多いようだ。
第1の滝を越えるといよいよ「みこやしきの滝」の核心に入る。
予定通り、右側の左上したクラック沿いに行くことする。
左手にカムを持って左岸から右岸へと移りこむ。
周りはまるで薄暮の暗さ。
ヌンチャクを掛けたがボルトは効いていない。
バックアップにナッツを決めているところ。
出だしにカムを決め、A1で右壁に乗り込む。その後、アブミから下りてやや右寄りに上がりこむところが悪い。微妙なバランスを強いら
れ、前回確認したリングボルトにヌンチャクを掛けると、ぐらぐらと動いている。まったく信用にならない。ナッツをセットし、そこに
アブミを掛け、テラスに上がりこむ。
テラスからはクラックが続いている。だが、曇り空の上、薄暗い渓谷の中、さらに奥まった箇所に位置するため、クラックの中は真っ暗。
手探りでサイズを確認し、岩の崩れを想定して、いつもよりトリガーを絞り、そして、いつもより奥にセットする。カムは決まる。しか
し、岩質を考えれば強いテンションはかけられない。なるべく、体重をかけないようにフリーで進む。アブミを使う箇所はカムが揺れな
いようにゆっくりと。
カンテに達して、先を覗き込むと幸い滝の落ち口近くまでクラックは続いている。
クラックが切れた箇所から左へと移りこみ左岸の安定して箇所へと上がりこむ。ボルトを打つことなく、思いのほかすんなりと解決する
ことができた。
トラバース中の私。カンテ手前で。
左よりかなりの水が噴出していた。そこは直登不可能。
とにかく、暗いところ。
撮った写真もことごとく写りが悪かったようだ。
滝の上には一本の残置ハーケンとビナが1つある。両方とも新しい。おそらく沢くだりに使ったものだろう。そこに取りあえずセルフビレ
イをとった後、念のために確認すると、やはり、ぐらぐらと動いている。すぐにカムでバックアップを取りセカンドに備える。
二人が上がってきたところで、ゴルジュを15mほど進むと、めがね滝がある。高さ3m。
めがね滝へ向かう私。
ここも気を抜けないところ。
めがね滝。右はかなりの水量があった。
滝の中にナッツでプロテクションをとり、越える。見た目は悪そうだが、これまでで一番快適に登れる箇所といえる。
ここから先はしばらくは泳ぐ箇所も滝も無く進み、猿渡で遅い昼食をとる。
昼食後、遡行すること40分。3mの滝が見えてきた。高さこそたいしたことは無いが、以外に悪い。チムニー登りで上部へ上がる。
さらに遡行すること20分。泳ぎの箇所が出てくる。先は見えない。その先から水の落ちる音が響いてくる。そうとうに大きな滝がある
ようだ。おそらく最後の滝、「めくらの滝」だろう。50mあまり背泳ぎで泳ぎ、振り返ると15mほどの滝が全貌を現した。唖然とする。
落ちる水量はすさまじく、周りの壁はのっぺりとしている。流れに逆らいながら周りを廻るも弱点が見つからない。泳ぎ始めてかなり
なる。体が急激に冷えてきた。これ以上は体力を消耗するばかり。
残された時間は少ない。水の中でこれ以上粘るのは肉体的にも時間的にも無理と判断、残念だが撤退することにした。帰りしな、もう
一度、滝を確認すると弱点らしき箇所があるのが分かった。やってみなければわからないが、可能性を見出せただけ救い。次回に期待
を持てる。
やっと、地上へ。
正面に見えるのが椿の駐車場へ上がる階段。
この階段が少ないため、一度入渓すると不慮の
ときは脱出は難しい。
終えて・・・
前回時間切れで敗退した「みこやしきの滝」を越えたのは一つの成果。
最後のめくらの滝も越える目的で進んだが、敗退となった。なすすべも無かった。せめて、上半身でも休めるところでもあれば、体勢
を整え、作戦を練りなおせるのであるが、この時期、水の中に長時間いるのはいたずらに体力を消耗するばかり、初見突破の難しさを
感じた。救いはわずかながらでも可能性を見出せたことだ。それがモチベーションをあげてくれる。そして、それがある限り、「俺た
ちに来年はある」
完全遡行を是非ともやり遂げたいが、もう寒いだろう。来年のことはわからんけど、来年に持ち越しということで話は終わった。それ
から2、3日経って、「来年のことはわからんな」という言葉が気になり始めた。そう、「俺たちに来年はない」かもしれない。やりた
いという気持ちがあるうちに行ったほうが良いのでは。と思い立ち、白きりさんに電話すると、白きりさんも同じ考えだったようで、
よし。やろうという返事。予定を10月23日としたが、金曜日にかなりの雨が降った。大雨洪水注意報もでた。これでは当然無理。翌週
は白きりさんが大阪マラソン参加のため無理。ということで11月3日木曜日、文化の日に行くことにした。しかし、11月に入ってからの
遡行は寒さがこたえるだろうことは、容易に想像できる。下手をすると「俺たちには明日は無い」という状況にもなりかれない。寒さ
対策を入念にする必要がある。しかし、水の中で寒さ対策といってもどういうものがあるのだろうか。水の中での防寒には限りがある
だろう。結局のところ、酒を控え、節制をするのが一番かもしれない。
11月2日。
朝から小雨がぱらつく。逃げ場の無い由布川渓谷。心配になったが、終始小雨。この程度の雨なら行けるだろうと決行とし、由布川渓
谷近くのキャンプ場「きのこの森」へと向かう。9時前到着。皆がまだ来ていないので、温泉に入った後、バンガローでビールを飲んで
いると、ますもちゃんが到着。飲もうと誘うと、今日は明日のために飲まないという。心がけが違う。
10時過ぎ、しろきりさん到着。こちらはビールと焼酎を抱えている。明日のために、この辺でと思っていたのであるが付き合うことに
する。結局、寝たのは12時を回っていたか。節制を念頭に入れていたのだが。
明けて文化の日。
どんよりとした曇り。予定では6時30起床であったが、遅く寝たのがひびいた。車を二箇所に配車した後、由布川神社先の階段を下りて
入渓したのは9時15分。水量は前回よりも若干多いようだ。しかし、気温は前回よりも暖かいようで安心する。
入系直後。
もっとも穏やかな流れの箇所。
ここからは水質は良い。人造物の残骸も無くなり遡行の環境はぐっと良くなる。懸念であった鹿の死体も流されてない。一安心だ。
狭いところに来ると、暗い。
フラッシュをたかなければブレるし、たけば水滴が写る。
撮影は難しい。
40分ほどで、みこやしきの滝の下部へ到着。
前回、残置ハーケンにヌンチャクをかける際、苦労した箇所は1発で掛ける事ができた。やはり、水量が多いようだ。
第1の滝を越えるといよいよ「みこやしきの滝」の核心に入る。
予定通り、右側の左上したクラック沿いに行くことする。
左手にカムを持って左岸から右岸へと移りこむ。
周りはまるで薄暮の暗さ。
ヌンチャクを掛けたがボルトは効いていない。
バックアップにナッツを決めているところ。
出だしにカムを決め、A1で右壁に乗り込む。その後、アブミから下りてやや右寄りに上がりこむところが悪い。微妙なバランスを強いら
れ、前回確認したリングボルトにヌンチャクを掛けると、ぐらぐらと動いている。まったく信用にならない。ナッツをセットし、そこに
アブミを掛け、テラスに上がりこむ。
テラスからはクラックが続いている。だが、曇り空の上、薄暗い渓谷の中、さらに奥まった箇所に位置するため、クラックの中は真っ暗。
手探りでサイズを確認し、岩の崩れを想定して、いつもよりトリガーを絞り、そして、いつもより奥にセットする。カムは決まる。しか
し、岩質を考えれば強いテンションはかけられない。なるべく、体重をかけないようにフリーで進む。アブミを使う箇所はカムが揺れな
いようにゆっくりと。
カンテに達して、先を覗き込むと幸い滝の落ち口近くまでクラックは続いている。
クラックが切れた箇所から左へと移りこみ左岸の安定して箇所へと上がりこむ。ボルトを打つことなく、思いのほかすんなりと解決する
ことができた。
トラバース中の私。カンテ手前で。
左よりかなりの水が噴出していた。そこは直登不可能。
とにかく、暗いところ。
撮った写真もことごとく写りが悪かったようだ。
滝の上には一本の残置ハーケンとビナが1つある。両方とも新しい。おそらく沢くだりに使ったものだろう。そこに取りあえずセルフビレ
イをとった後、念のために確認すると、やはり、ぐらぐらと動いている。すぐにカムでバックアップを取りセカンドに備える。
二人が上がってきたところで、ゴルジュを15mほど進むと、めがね滝がある。高さ3m。
めがね滝へ向かう私。
ここも気を抜けないところ。
めがね滝。右はかなりの水量があった。
滝の中にナッツでプロテクションをとり、越える。見た目は悪そうだが、これまでで一番快適に登れる箇所といえる。
ここから先はしばらくは泳ぐ箇所も滝も無く進み、猿渡で遅い昼食をとる。
昼食後、遡行すること40分。3mの滝が見えてきた。高さこそたいしたことは無いが、以外に悪い。チムニー登りで上部へ上がる。
さらに遡行すること20分。泳ぎの箇所が出てくる。先は見えない。その先から水の落ちる音が響いてくる。そうとうに大きな滝がある
ようだ。おそらく最後の滝、「めくらの滝」だろう。50mあまり背泳ぎで泳ぎ、振り返ると15mほどの滝が全貌を現した。唖然とする。
落ちる水量はすさまじく、周りの壁はのっぺりとしている。流れに逆らいながら周りを廻るも弱点が見つからない。泳ぎ始めてかなり
なる。体が急激に冷えてきた。これ以上は体力を消耗するばかり。
残された時間は少ない。水の中でこれ以上粘るのは肉体的にも時間的にも無理と判断、残念だが撤退することにした。帰りしな、もう
一度、滝を確認すると弱点らしき箇所があるのが分かった。やってみなければわからないが、可能性を見出せただけ救い。次回に期待
を持てる。
やっと、地上へ。
正面に見えるのが椿の駐車場へ上がる階段。
この階段が少ないため、一度入渓すると不慮の
ときは脱出は難しい。
終えて・・・
前回時間切れで敗退した「みこやしきの滝」を越えたのは一つの成果。
最後のめくらの滝も越える目的で進んだが、敗退となった。なすすべも無かった。せめて、上半身でも休めるところでもあれば、体勢
を整え、作戦を練りなおせるのであるが、この時期、水の中に長時間いるのはいたずらに体力を消耗するばかり、初見突破の難しさを
感じた。救いはわずかながらでも可能性を見出せたことだ。それがモチベーションをあげてくれる。そして、それがある限り、「俺た
ちに来年はある」