市房山頂へと至る山之口谷を遡行したのが12年前、途中の100m滝を仰いだ時に、これは登れそうだ。いつ
か登りに来たいと思いながらも年月が流れた。
年齢的にも今年が限界だろうと、相手を探った。
第一優先はこの滝を見たことのある人、そして当然、指向性のある人。該当は3人。しかし、その内の折〇君
は転勤。片〇君は行きたいが休みが確定できないとのこと。残る熊本の山本君に話をすると、私も行きたいと
思っている所という。理想は3人だが、身近には他に見当たらない。
2人で行くことに決めてから計画するも、豪雨や台風で3、4度延期した。やっと天気が安定した10月11日に
決行としたが、急に気温が下がってきた。長雨も続いている。覚悟がいるだろう。
7時、入渓点近くまで行くと、民家から犬がついてきた。
ザックを担いでふと見ると、杣道の入り口で待っている様子。我々が歩き出すと、先導して歩いていく。案
内してくれるのだろうか。
道はすぐに途切れたが、我々にとっても楽なルート取りでひょこひょこ迷いなく歩いていく。遅れれば振り
返って待ってもくれる。真にガイド犬だ。
目的の100m滝まで2時間近くも案内してくれた。
お礼にチーズかまぼこをあげたが食べてくれない。撫でようとすると避ける。
とてもシャイな女の子だ。
しばらくすると、慣れて来たのかチーズかまぼこをやっと食べてくれた。体力もかなり使ったはず。帰りの
ことを考えるとひと安心だ。
ここでワンコとはお別れ。一人で下山させるのが申し訳ない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/cd/740d01acba84fdb6874945f94d8370a9.jpg)
優しい顔つきのワンちゃん。待ってくれている。
短いしっぽが特徴だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/46/2749151c510b275bba533b3f686dd78b.jpg)
先導して歩いてくれる。時折、地図で確認すると方向は間
違っていない。行き先は言わずとも分かっているようだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/52/5aac73a0ff09eef0f1ec9844c4e4a3bf.jpg)
滝を真下から撮影。
滝を見上げると、「こうも立っていたか、水量も多い。行けるだろうか。」と印象は一転。過去の自分がうそぶい
たのか、それとも12年の年月で心身ともに退化したのか、滝に威圧されたのが正直なところだ。
しかし、何もせずに敗退は出来ない。なにしろ大分から麓まで一人で5時間運転し、ここまで重い荷物に喘いで
もきた。
とりあえず、1ピッチ登って、様子を見ようと、私がトップで取り付く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/ba/a46351e142ed312793c75999d3698719.jpg)
ロープを延ばす私。
ここから激しい水流に向かう。
滝の近くはさして苦労もなく進むも、滝に近づくと水流でカムをセットする箇所が判別できない。手探りで
セットしても効いているか目視できない。ここは経験と勘で行くしかない。
カムを信じて、怒涛の水圧に堪えながら思い切って、滝の下をトラバースする。なんとか剝がされずにすんだ。
このピッチで最も緊張する箇所だった。
予定していた箇所でビレイ点を作って、セカンドを待つ。
ここまで来れば、もう行くことしか考えない。彼もそのようだ。
後はルート取りを慎重に見極めなければならない。間違えればとんでもないことになる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/28/357c1dedeada9a60ef96f26d9baef2b2.jpg)
滝のトラバースへと入る手前の山本君。ここは気合がいった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/c0/4ecbe2f622815b93a7df69de9f0d8dcb.jpg)
普段の水量ではないだろう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/b0/bca3e0e62794fb11aad8ae49955eabc3.jpg)
2ピッチ目は山本君に交代
滝へと回り込む箇所が悪そうだ。実際、私がセカンドで行く折に、よく行ったなと思うほど悪い部分だった。
ビレイ点直下に打ったハーケンは良く効いている。小型タガネで何度も上下に打つと、なんとか回収。
3ピッチからは私
ここは比較的大きなホールドが多いものの、如何せん、岩質が悪い。砂岩質特有のスレート状の割れたホー
ルドが多い。思いっきり掴むことはできないし、足も安易に乗せられない。落とせばビレイヤーに直撃しそう
だ。だましだましの前進といったところだ。
当然、プロテクションを取る箇所も限定される。フォールすれば、ナッツやカムが岩を押し開きそうな箇所が
多い。確実に効く箇所を入念に選定し、プロテクションをセットして、水が落ちてこない狭い凹に入り込んで、
ここをビレイ点とした。
4ピッチ目、最後のピッチだ。ここからは山本君に交代
ここまでは緊張感で寒さはさほど感じなかったが、ビレイ中に震えが止まらなくなった。状況を見ようと凹から
少し体を出すと怒涛の滝。さながら映画の中の弾の飛び交う塹壕のようだ。
トップはというと、順調にロープを伸ばしていく、滝の落ち口近くは樹林帯へと逃げ込めそうだが、果敢に落
ち口で粘っている。流石だ。飛沫とともに、緊張感が伝わってくる。
飛沫を浴びながら震えていると、突如、飛沫が止まった。
見上げると彼は落ち口に立っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/5b/68046ef8538384510bc4ba3706097eae.jpg)
終了点の落ち口へと登る私。
落ち口はやや被っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/f8/bfc5391d1ce4380be31b35f8ae090642.jpg)
側壁にへばりつく私。
1人が2ピッチずつ担当、4ピッチ、オールフリー。そして残置物なしという理想的な内容で終えることが出来た。
今回のような未知なるものへのチャレンジは何年ぶりだろうか。何も情報がない中での登攀は何物にも代えがたい。未だ余韻に浸っている。
こうゆう事が出来るのも、同じ思い、そして力のあるパートナーがいてこそのこと。あらためて感謝である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/6b/99ad6901c4be709a86df7405c3e20e14.jpg)
無事に下りて記念撮影。
写真では小さく見える。
上部はやや被っているようにも見えた。
追記
滝には残置のハーケンもボルトも確認できなかった。昔に登られていれば、なにかしらの形跡があるだろう。近年に登られていれば情報がアップされているだろう。
初登かもしれないがさだかではない。
下山後、ワンコへの下山報告かたがた、ガイドのお礼に飼い主さんの所へ向かうと、ワンコが吠えて家人に訪問
を知らせたのち、出迎えに来てくれた。なんとお利口で優しいことか続いて家人も出てきたので、ガイドのことを話すと、飼い犬がそういう事をしているのが以外そうであった。
名前はクロちゃん、歳は10歳を超えているとのこと。
放し飼いで周りは野山。犬にとっては理想的な環境だ。その反面、ここはぽつんと一軒家。周りに遊び友達が
おらず、いつも一人で遊んでいるのだろう。
それにしても、10歳を超える歳での今回の行程は、退屈しのぎで出来ることではないだろう。ありがたいガイ
ドであった。
次回来るとすれば完全遡行で来るときだろう。それまで元気でいてほしい。また会いたい。
か登りに来たいと思いながらも年月が流れた。
年齢的にも今年が限界だろうと、相手を探った。
第一優先はこの滝を見たことのある人、そして当然、指向性のある人。該当は3人。しかし、その内の折〇君
は転勤。片〇君は行きたいが休みが確定できないとのこと。残る熊本の山本君に話をすると、私も行きたいと
思っている所という。理想は3人だが、身近には他に見当たらない。
2人で行くことに決めてから計画するも、豪雨や台風で3、4度延期した。やっと天気が安定した10月11日に
決行としたが、急に気温が下がってきた。長雨も続いている。覚悟がいるだろう。
7時、入渓点近くまで行くと、民家から犬がついてきた。
ザックを担いでふと見ると、杣道の入り口で待っている様子。我々が歩き出すと、先導して歩いていく。案
内してくれるのだろうか。
道はすぐに途切れたが、我々にとっても楽なルート取りでひょこひょこ迷いなく歩いていく。遅れれば振り
返って待ってもくれる。真にガイド犬だ。
目的の100m滝まで2時間近くも案内してくれた。
お礼にチーズかまぼこをあげたが食べてくれない。撫でようとすると避ける。
とてもシャイな女の子だ。
しばらくすると、慣れて来たのかチーズかまぼこをやっと食べてくれた。体力もかなり使ったはず。帰りの
ことを考えるとひと安心だ。
ここでワンコとはお別れ。一人で下山させるのが申し訳ない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/cd/740d01acba84fdb6874945f94d8370a9.jpg)
優しい顔つきのワンちゃん。待ってくれている。
短いしっぽが特徴だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/46/2749151c510b275bba533b3f686dd78b.jpg)
先導して歩いてくれる。時折、地図で確認すると方向は間
違っていない。行き先は言わずとも分かっているようだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/52/5aac73a0ff09eef0f1ec9844c4e4a3bf.jpg)
滝を真下から撮影。
滝を見上げると、「こうも立っていたか、水量も多い。行けるだろうか。」と印象は一転。過去の自分がうそぶい
たのか、それとも12年の年月で心身ともに退化したのか、滝に威圧されたのが正直なところだ。
しかし、何もせずに敗退は出来ない。なにしろ大分から麓まで一人で5時間運転し、ここまで重い荷物に喘いで
もきた。
とりあえず、1ピッチ登って、様子を見ようと、私がトップで取り付く。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/ba/a46351e142ed312793c75999d3698719.jpg)
ロープを延ばす私。
ここから激しい水流に向かう。
滝の近くはさして苦労もなく進むも、滝に近づくと水流でカムをセットする箇所が判別できない。手探りで
セットしても効いているか目視できない。ここは経験と勘で行くしかない。
カムを信じて、怒涛の水圧に堪えながら思い切って、滝の下をトラバースする。なんとか剝がされずにすんだ。
このピッチで最も緊張する箇所だった。
予定していた箇所でビレイ点を作って、セカンドを待つ。
ここまで来れば、もう行くことしか考えない。彼もそのようだ。
後はルート取りを慎重に見極めなければならない。間違えればとんでもないことになる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/28/357c1dedeada9a60ef96f26d9baef2b2.jpg)
滝のトラバースへと入る手前の山本君。ここは気合がいった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/c0/4ecbe2f622815b93a7df69de9f0d8dcb.jpg)
普段の水量ではないだろう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/b0/bca3e0e62794fb11aad8ae49955eabc3.jpg)
2ピッチ目は山本君に交代
滝へと回り込む箇所が悪そうだ。実際、私がセカンドで行く折に、よく行ったなと思うほど悪い部分だった。
ビレイ点直下に打ったハーケンは良く効いている。小型タガネで何度も上下に打つと、なんとか回収。
3ピッチからは私
ここは比較的大きなホールドが多いものの、如何せん、岩質が悪い。砂岩質特有のスレート状の割れたホー
ルドが多い。思いっきり掴むことはできないし、足も安易に乗せられない。落とせばビレイヤーに直撃しそう
だ。だましだましの前進といったところだ。
当然、プロテクションを取る箇所も限定される。フォールすれば、ナッツやカムが岩を押し開きそうな箇所が
多い。確実に効く箇所を入念に選定し、プロテクションをセットして、水が落ちてこない狭い凹に入り込んで、
ここをビレイ点とした。
4ピッチ目、最後のピッチだ。ここからは山本君に交代
ここまでは緊張感で寒さはさほど感じなかったが、ビレイ中に震えが止まらなくなった。状況を見ようと凹から
少し体を出すと怒涛の滝。さながら映画の中の弾の飛び交う塹壕のようだ。
トップはというと、順調にロープを伸ばしていく、滝の落ち口近くは樹林帯へと逃げ込めそうだが、果敢に落
ち口で粘っている。流石だ。飛沫とともに、緊張感が伝わってくる。
飛沫を浴びながら震えていると、突如、飛沫が止まった。
見上げると彼は落ち口に立っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/5b/68046ef8538384510bc4ba3706097eae.jpg)
終了点の落ち口へと登る私。
落ち口はやや被っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/f8/bfc5391d1ce4380be31b35f8ae090642.jpg)
側壁にへばりつく私。
1人が2ピッチずつ担当、4ピッチ、オールフリー。そして残置物なしという理想的な内容で終えることが出来た。
今回のような未知なるものへのチャレンジは何年ぶりだろうか。何も情報がない中での登攀は何物にも代えがたい。未だ余韻に浸っている。
こうゆう事が出来るのも、同じ思い、そして力のあるパートナーがいてこそのこと。あらためて感謝である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/6b/99ad6901c4be709a86df7405c3e20e14.jpg)
無事に下りて記念撮影。
写真では小さく見える。
上部はやや被っているようにも見えた。
追記
滝には残置のハーケンもボルトも確認できなかった。昔に登られていれば、なにかしらの形跡があるだろう。近年に登られていれば情報がアップされているだろう。
初登かもしれないがさだかではない。
下山後、ワンコへの下山報告かたがた、ガイドのお礼に飼い主さんの所へ向かうと、ワンコが吠えて家人に訪問
を知らせたのち、出迎えに来てくれた。なんとお利口で優しいことか続いて家人も出てきたので、ガイドのことを話すと、飼い犬がそういう事をしているのが以外そうであった。
名前はクロちゃん、歳は10歳を超えているとのこと。
放し飼いで周りは野山。犬にとっては理想的な環境だ。その反面、ここはぽつんと一軒家。周りに遊び友達が
おらず、いつも一人で遊んでいるのだろう。
それにしても、10歳を超える歳での今回の行程は、退屈しのぎで出来ることではないだろう。ありがたいガイ
ドであった。
次回来るとすれば完全遡行で来るときだろう。それまで元気でいてほしい。また会いたい。