天と地の間

クライミングに関する記録です。

Ⅱ峰奥壁人形岩ルート、【ソーン・バード】公開

2017年05月28日 | 開拓

この手の開拓に入る人は少ない。とりわけ九州においてはドラッドクライマーは絶滅危惧種。何処に生息しているかほぼ分る。それゆえここの開拓も当初は単独で入った。

左が人形岩。肌色の岩の右手に二人取り付いているのが見えるだろうか。。 

 

1ピッチに取り付く堤。被りの基部を右に回りこむ。

私はマルチの開拓はグランドアップを基本としている。当然、怖い目も見た。2ピッチ終了点のトラバースでは、行けばカムを効かせられるだろうと、祈る気持ちで突っ込んだ。ホールドが欠けて吹っ飛んだこともある。

それでも頭部に立つまではと2度、単独で入った。だが疲労度がすさまじく、開拓のモチベーションは徐々に低下していった。その後、何人かの力を借りて昨年9月にやっと、頭部に立つことができた。それからフリー化のために訪れた今日まで8か月の空白がある。強力な助っ人Tがいるが彼の休みが平日とあって来る機会がめったになかったことによる。

2ピッチをフォロー中の堤。快適なピッチだ。景色も良い。

28日、土曜日はT氏と二人で入った。フリー化のために今日はドリルもバックロープも持たずに来た。当然今日は軽い。軽く3ピッチ目まで来れた。問題はここから。いろいろとムーブ解決に工夫を凝らしたがすぐに指力がなくなりT氏と交替。彼も同様のようだ。地上を離れてすでに3時間ぶら下がっている。パフォーマンスも低下する。ビレイだけでもきつい。くわえて日も差してきた。もうこれ以上は無理だろう。秋へと持ち越そうと。エイドで行くことにした。

3ピッチ出だしの私。被り気味で最も困難な箇所。

人形岩の肩に立って小休止したのち、ここだけは解決しようと取付いたが、あと一手がでない。13を数本落としている彼をもってしても難しいようだ。替わって私が取付いたが同じくあと一手というところ。ここへ来るまでに指はもとより全身を使って疲労している。久しぶりのクラックとあってか、情けないことに彼も私も指がこむら返しを起こす始末。地上にあるボルダーならこなせないことはなさそうだが。頭部も次回の課題とし、撤収することにした。

4ピッチ、頭部に取り付く私。背面右端はニードル。かなり下に見える。今いる場所は標高600m

今回、フリー化もせずに公開するに至った理由は、ひとえに難易度。私の能力をはるかに超えているということ。そしてトライできる機会が少なく、このままではいつフリー化できるか先が見えない。ということから決断した。さらには公開することによって、トラッドクライミングが少しでも活性化すればという淡い期待である。1,2ピッチはグレードは易しい。そこだけでも良い練習になるだろう。九州以外から比叡に訪れる人は、フリー化を楽しみの一つとしてほしい。

公開したとはいえ、我々はフリー化を諦めたわけではない。ボルダー能力を高めて秋に戻ってくる。

ルート名【ソーンバード THORN BIRDS】の由来

Thorn Bird(茨の鳥)とはニュージーランドの伝説の鳥。生まれた時から棘のある木を探し求めて飛び続け、最も鋭い棘のある木を見つけると、その木のトゲに飛び込む。そして絶命する時に世の鳥の中で最もきれいな声を発するという。

一方、我々はというと、クラックの中の茨や松の葉で顔や手を突き、なんど悲鳴を上げたことか。落ちる刹那に奇声を発したことは数知れない。

 

アプローチ紹介。

比叡山頂へと上がっていくと神楽面を刻んだという岩屋の看板がある。そこより左へと入るとⅡ峰奥壁へと行ける。ここまでトイレ駐車場から15分。人形岩の取付きは神楽面の分岐点からおよそ15分。取付きに入る10m先が急傾斜となっている。人形岩への入り口は右手に20cmほどの看板を下げた。また7cmほどの黄色い反射板を要所要所に下げている。

分岐点、左側にある標識。岩屋へと向かえばⅡ峰奥壁へと行ける。向かいに下部の標識有。

 岩屋へと入る分岐点右手にある標識。ここより左へと入る。

ルート紹介。

難しいところは2箇所がある。特に悪いところは3ピッチ出だし4mの箇所。フットホールドは乏しく、クラックはシンクラック。軽く12は超えているだろう。もう1か所は4ピッチめの頭部のフェース。これも12はありそうだ。

ロープ2本あれば懸垂1回で取付きまで下降可。頭部正面下部に懸垂用終了点を設置済み。

南面であるため、夏のクライミングは無謀かと思われたが風の通りがいいため、早めに取付き、昼までに切り上げれば夏でも十分に登れる。

使用ギアはキャメロット0.5~3を2セット。エイリアン青、緑、黄色。(青、緑は2セット)、ナッツ。

1ピッチ13m グレード9 各ピッチのmは目安

2ピッチ18m    10a

3ピッチ13m    12以上 想定

4ピッチ6m    フェースルート。上部はカム必要。 12以上 想定

ルート図については、後日掲載予定。

注意点・・・人形岩のフレークは欠けやすいため、要注意。頭部から肩へと下りる際は、反対側に下りて回り込んだほうが無難。(傾斜しているために懸垂時にスタックする可能性があるため。)

最後に・・・これまで開拓に入ってくださった皆さん。お疲れ様でした。今度はフリー化で訪れてください。

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初めてのヤケダケエリア

2017年05月15日 | ボルダー

春山を終えて、ぼちぼち上半身の筋肉を戻さなければならないと、日曜日は一人でボルダーに行くことにした。場所は最近公開された比叡のヤケダケエリア。大谷エリアの上部と聞いていたので大体の目星をつけていくと、要所要所に標識を立ててくれていて、迷うことなくたどり着けた。駐車スペースには20台はあっただろうか。最近公開された人気のエリアとあって多い。

歩き始めてすぐにそのエリアの広さに驚かされた。アプローチは縦横に走り、その先にボルダーが点在している。開拓には大変な労力があっただろう。エリアは全体は広範囲に切り開かれている。地元の人の理解なしにはできないことだ。

ボルダーの周りは切り開かれている。地元の人の理解と開拓者の労力無しにはできないことだ。

とりあえずは最上部へ行ってみようと歩いていると、元クラブの後輩のO氏に会った。何年ぶりだろう。6年くらいか。近況を語り合った後、彼ら5人のグループに混ぜてもらった。先ずはアップにと、5級、4級のスラブに取付いたがかろうじて登れた。アップにはならない。ボルダーがずいぶん久しぶりなため、ランディングにばかり気を取られ、腰が引けているのが自分でもわかる。その後、1級課題に取付いたが手を出すところでビビりが入り飛び下りた。ぼちぼちと適応していくしかないだろう。

一人を除いてみんな初対面であったが気軽に受け入れてくれた。皆で登れば盛り上がる。

今日あらためて感じたことは恐ろしく指力が落ちているということ。当然、その回復力も持久力もかなり落ちている。外のボルダーをもっと取り入れなければと、つくづく感じたが足腰の持病も心配。走れなくなればアルパインができなくなる。無理に打ち込むことなく定期的に通うことにしよう。

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久しぶりに剱へ

2017年05月04日 | 冬山

今年は久しぶりに春山に入ろうと話し合った。場所は雪が多いほうが良かろうと剱に決めた。ルートは八峰。メンバーは正月の八ヶ岳と同じメンバー白きりさん、ありきちさん。

これまた久しぶりの剱である。前回は同じく八峰であった。違うのは取付き。前回は黒部ダムから入り、早月尾根を下りたが今回は室堂から入り同じく室堂に下りる。

九州から室堂に上がるにはとかくに時間がかかる。29日の6時前に大分を出てから雷鳥沢のキャンプ場に着いたのが18時過ぎ。テントを立てると早速、祝杯を挙げる。今回もまた食料担当はありきちさん。相変わらずに気の利いた献立に杯はかさむ。今回も太って帰りそうな予感がする。

30日、剱沢へ向けてキャンプ場を後にする。剱御前小屋までの上りが朝の動き初めには結構きつい。前後にシールを貼って登行するスキーヤーやスノーシューを履いたスノーボーダーが散見される。軽やかそうに上がっている。実際、楽だろう。荷物も軽い。かつてまね事をしたことがあるが今は昔。

 雷鳥沢キャンプ場撤収。

登ってくる人たち。この時期にしては少ない。一見なだらかに見えるが結構な登りである。

雷鳥。昔は良く見ものだ。今や絶滅危惧種。姿を確認してほっとする。

真っ白からまだらへと生え変わり時期だ。

およそ2時間で剱御前小屋に着。ここでビールを買って、ゆったりと暖を取りながら飲む。今日は急ぐことはない。後は剱沢まで下がるだけだ。

小屋を後にして30分。剱沢着。先着は1張り。5人が入っている。聞くと源次郎尾根を目指しているとのこと。その彼らの隣にテントを張ることにする。明日は荒れるとの予報とあって、入念に風よけを作ることにする。ブロックを切出し重ねること40分、テントを立てると、まずは一杯飲みながら打合せをする。とりあえずは休憩後にセオリー通りに取付きの偵察に行くことにする。

左端は剱岳。右端の鋸状の稜線が目指す八峰。そして右下の沢がこれより下る剱沢。

平蔵谷。一見、緩やかに見えるが写真ならではの錯覚。

長次郎谷のデブリ。

午後2時、八峰の取付きを目指して剱沢を下る。とにかく長い下りだ。これを登り返すのかと思うといささか気が重い。途中、沢の下部にデブリできている。ここは危険な個所だということを改めて暗示させられる。出発して40分ほどで長次郎谷に到着。トレースは全くない。今季我々が初めてだろう。取付きの沢を確認後、すぐに引き返していると平蔵谷の上空に救助ヘリがやってきてホバーリングを始めた。詳しくは割愛するが後で聞くと、一人が雪崩に巻き込まれて犠牲になったとのこと。沢筋に安全な個所はない。 

登行を初めて1時間半、テン場着。後の楽しみは飲むことと食べること。ありきちちゃんの献立がありがたい。寝袋に入った頃から風が強くなり、一晩中、猛烈な吹雪となった。当然、次の日は停滞。昼を過ぎても嵐は収まらない。隣のパーティーは昼頃に撤収していった。前日に入ってきた単独後者は同日に撤収していた。我々は明日、この新雪をついて沢に入るのは危険だろうと、別山尾根から剱を目指すことにした。九州からきてただでは帰れない。

剱御前小屋から先は県条例により、県警の許可がいる。そのため小屋まで戻り、県警にルートの変更許可を申請しようと決めた。昼過ぎまで天候が治まるのを待ってテントを撤収し、登行を開始するもホアイトアウトで10m先が見えない。地図で確認していると幸運にもガスが切れてきた。無駄な動きをすることなく小屋までたどり着けた。

目指す剱。

2日、トレースがないため、やや遅く5時前に小屋を立つ。今日は打って変わって晴天の上、微風。小屋から離れると静寂そのもの。連休前半とあってか、我々3人以外に人を確認できない。

トレースはまったくない。写真は私

手前のピークは一服剱。中央の沢が剱沢。この沢の登り返しが結構きつい。都合2回上り返した。

急傾斜を上ってくる白きりさん。相変わらずのタフさ。

順調に登り、10時過ぎ山頂着。

中央遠くに富士が見える。

山頂まではトレースなく誰にも会うことはなかったが山頂には別ルートから上ってきたパーティーが5人ほどいた。連休前半とはいえ少ない数だ。先を急がなければならない。休憩もそこそこに下る。

 

もっとも危険な箇所、平蔵谷を急いで下る。

一昨日はなかったデブリ。

疲れた身体には剱沢の長い登りは堪える。平蔵谷末端から登ること1時間半、午後4時剱御前小屋着。後は下るだけだ。

 

おなじみ、春の風物詩。バスの中から撮影。

 

称名滝。帰りのバスから撮影。これを登った人がいるとは。

 

 

 

 

 

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