中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

姑蘇城外寒山寺

2007-11-29 09:46:56 | 中国のこと
 盛唐の詩人張継の七言絶句「楓橋夜泊」は夙に有名で、とりわけわが国ではよく知られているのではないかと思う。

 月落烏啼霜満天  江楓漁火対愁眠
 姑蘇城外寒山寺  夜半鐘声到客船
  (月落ち烏啼いて霜天に満つ  江楓の漁火愁眠に対す 
   姑蘇城外寒山寺 夜半の鐘声客船に到る) 

 姑蘇は蘇州の古称。寒山寺は旧蘇州城から西の方にある。現在は市内だが、昔は郊外である。

 この詩から寒山寺、とりわけその鐘は有名になり、日本からは毎年大晦日になると観光客がたくさん訪れて、除夜の鐘を聴きながら年を越すのだそうだ。NHKの「行く年来る年」でも寒山寺は紹介されたように記憶する。もっとも中国では除夜(除夕)、新年は旧暦だから、本来は旧暦の大晦日に聴くのがいいのではないか。それはともかくとして、大晦日に限らず蘇州に来て寒山寺を訪れない観光客はないだろう。私も今回で3回目であった。

 寒山寺のすぐそばを流れる京杭運河に架けられた石造りのアーチ橋があり、江村橋と言う。張継はこの橋の近くに舫った船中で一夜を過して、夜半に寒山寺の鐘声を聴いたのではないかと想像されて、この橋が彼の詩の題である楓橋とよく間違われるそうだが、楓橋は別の所にあると言う。


 寒山寺の入り口。大きな山門のようなものはなく、入り口も小さく目立たない。中国の寺の塀や建物は尊い色とされる黄色に塗られていることが多い。


 中に入ると意外に奥行きがあり、本殿(大雄宝殿)の前も広い。




 大雄宝殿の中に祭られている金色の本尊。


 鐘楼。ここに寒山寺の鐘がある。2階に鐘があり参詣客は撞くことが出来るが有料である。


 一番奥には回廊に囲まれた塔がある。普明宝塔と言う。




 回廊にはたくさんの書が掲げられている。やはり張継の楓橋夜泊が多い。


 塔周囲の四隅には獅子のような怪獣の像がある。財産が出来ることを叶えるものと長寿を叶えるものの2つがある。日本人が寄進したものである。
  財産 

  長寿

 幼い子が祖父と一緒に写真を撮っていた。財産に恵まれるようにという願いだろう。


 回廊入り口前の詩碑。


 同行したH君は、張継の詩から寒山寺がもっと鄙びたものと思っていたようで、実際にはかなり大きいのが意外だったと言っていた。今でこそ観光名所として多くの人が訪れるが、張継が「楓橋夜泊」を詠んだ唐代の寒山寺はどのようなものだったのか。あれこれ想像を掻き立てられる。