蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

日本軍のインテリジェンス

2008年07月19日 | 本の感想
日本軍のインテリジェンス(小谷 賢 講談社選書メチエ)

日中・太平洋戦争中の日本陸軍って、一人悪者にされている感じだし、「軍隊としてのかっこよさ」みたいなものが無くてイメージが悪い。それは戦果のせいというよりは、兵器の技術レベルによっているんじゃないかと思う。陸軍の銃器や戦車などの兵器の技術レベルは、ソ連、アメリカと圧倒的な差があったと思うけれど、海軍は少なくとも緒戦段階においては、米英海軍と互角以上の兵器を揃えていた。

そういうイメージにとらわれているせいか、インテリジェンス活動も陸軍側はないも同然だったんだろうな、と勝手に思っていた。
しかし、本書によれば、陸軍の情報部は情報収集、防諜については米英並みの体制があり、成果も相応にあがっていたらしい。一方海軍側はインテリジェンス活動らしきものは無いに等しく、特に防諜がなっていなくて、たびたび致命的なミスを犯し、司令長官を二度も失うなどの打撃を受けた。

本書では、戦前および現代の日本のインテリジェンスの問題点を次のように集約している。
①組織化されないインテリジェンス
②情報部の地位の低さ
③防諜の不徹底
④目先の情報運用
⑤情報集約機関の不在とセクショナリズム
⑥長期的視野の欠如によるリクワイアメントの不在

⑥の視点が新鮮であるように私には思えた。政策サイドが、戦略レベルの構想を作り、それに基づく情報収集の提供をもとめなければ、情報サイドは効率的に動けないし、情報サイドからの適切な情報提供により戦略がさらに高度化し新たなリクワイアメントが発生するというサイクルも動かない、とするものである。

確かに日本はこういうことが苦手そうだ。というより戦略的、長期的なビジョンを持ちえる人が少ないように思う。
コメント
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