蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

君がいない夜のごはん

2011年06月02日 | 本の感想
君がいない夜のごはん(穂村弘 NHK出版)

このブログで何回も書いているように、穂村さんのエッセイを読むのは抜群に楽しい。最近、本屋で見かけて迷わず買う本は穂村さんのエッセイくらいになってしまった。

しかし、世間的に見ると、まあまあ一定の固定ファンをつかんでいる(そうでないとこんなに連載があったり、出版されないだろう)ものの、どんどん重版、というほどでもないようだ。

それでは、なぜ、私が穂村さんのエッセイを偏愛するようになってしまったのだろうか。私とほぼ同年代なので、昔の思い出話がでてくるとシンクロしやすいのだろう。
しかし、同年代の作家はそれなりにいるわけで、それだけではないだろう。
では、ひきこもり気味(食べ物をテーマにした本書でもたびたび出てくるように、著者は、幸せを感じるシチュエーションが、ベッドで菓子パンをかじってうだうだしてるみたいな、インドア?系(まあ、本職は歌人なのでいたしかたなかろうが))といったところが似ているからだろうか。

私が最も著者と似ているなあ、と思った点は別にあって、それは自尊心の高さ、かなあ、と思う。著者のどのエッセイでも、人付き合いがうまくいかない悩みが書かれている。読者の視点でみると、「それはあなたのプライドが高すぎるからでは?」と思えてしまうのだが、よく考えると、それはそのまま自分にあてはまっているのだった。

本書で特に面白かったのは、「ショコラティエとの戦い」(複雑化した食べ物の名前の話。カフェオレとカフェラテの違いに悩むあたりが面白い)、「「酔っ払い様の謎」(角田光代さんとの会話がいい)、「コンビニおにぎりの進化」、「完璧な朝食」(もう、これ、そっくりそのまま私のことです、って感じ)
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作家の口福(恩田陸ほか 朝日文庫)

2011年06月02日 | 本の感想
作家の口福(恩田陸ほか 朝日文庫)

朝日新聞の土曜日版の付録には「be」というのが二種類はさまっていて、赤い「be」には、食べ物をテーマにした「作家の口福」という作家の連載コラム(一人が4回程度を担当)がある。

赤い「be」は、付録の中でも付けたしって感じの位置づけで、「作家の口福」もあまり目立たない位置にあるので、見逃している人も多いのではないかと心配なのだが、執筆者は、今が旬といった感じの若手人気作家ばかり。
さすが朝日の威光は衰えず、みたいな印象がある。
私は、主にこのコラムを読むために、普段は読んでない朝日新聞を、土曜日の朝だけ近所のコンビニに買いに行っている。

本書は、その「作家の口福」を収録した文庫。恩田陸、古川日出男、村山由佳、井上荒野、森絵都、三浦しをん、江国香織、角田光代、道尾秀介といった一流どころを集めているし、エッセイ自体の内容も充実したものが多い。
朝日に連載ということの他に、やはり、食べ物をテーマにするとエッセイが書きやすい、といった面もあるのだろう。

本書でよかったのは
朱川湊人さんの「父の弁当」(父子家庭に育った著者、父に弁当を作ってくれと懇願するが・・・)、
江国さんの「スパイスと言葉」(とても素敵なインドレストラン)、
中村文則さんの「命の糧」(食うや食わずのフリーター時代、勤め先で叱責された後に自分に許したささやかな贅沢の味)。

本書には収録されていないが万城目さんの連載は4回ともとても面白かった。引き続き、連載が書籍化されることを強くお願いしたい。
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