蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

団地のふたり

2024年11月04日 | 本の感想
団地のふたり(藤野千夜 双葉文庫)

桜井奈津子と太田野枝は同級生で幼なじみ。古ぼけた団地に住み、野枝は奈津子の部屋にいりびたる。
奈津子はかつては人気イラストレータだったが、今は注文もまばらで、オークションサイトで近所の人から不用品売却を請け負って生計を?たてている。
野枝は大学の先生になりそこねて非常勤講師をしている。
二人は独身50代。将来の展望も夢も特にないが、日常はゆったりと流れていく・・・という話。

TVドラマ化されて好評のようだし、私が好きな貧乏くさい話っぽいので、読んでみた。

で、まさにど真ん中の貧乏話なのだが、しみったれた感じはまったくないし、二人とも経済的貧しさを自覚しながらも気にしていない。

奈津子は広場恐怖症?みたいな症状があって、遠方への外出は難しい。野枝は文系の天才だったのだが、大学での権力闘争?に敗れて、今では奈津子の部屋でダラダラ過ごすのが板についてしまった。
でも、二人ともそんな来歴や今の暮らしぶりを愚痴ることはない。

多くの日本人は老後の生活資金を心配して消費を抑えてひたすら貯蓄し、結局は資産のほとんどを持ったまま死んでしまう。これが経済がイマイチ盛り上がらない大きな原因といわれる。
この二人のような考え方をして、あまり将来を悲観しないようにすれば、日本の景気も多少はよくなるような気がした。
でも、本作のような、とてもジミーな本がドラマ化されて大人気ということは、この二人のような暮らしや考え方がしたいけど、リアルにはそうできない、という人が多いという証左なのかもしれない。
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ミッキーマウスの憂鬱

2024年11月04日 | 本の感想
ミッキーマウスの憂鬱(松岡圭祐 新潮文庫)

21歳の後藤大輔は、ディズニーランドのバイトに採用されて、キャラクターの衣装(かぶりもの)の装着補助や管理を行う部署に配属される。配属に不満を持ちつつも働き始めるが、ミッキーマウスの衣装が紛失するという大事件が発生し・・・という話。

ディズニーランドに関する描写がすべて実名ベースなので、同社公認・監修?のヨイショもの?なのかと思いきや、むしろ正反対で、実話なのかどうかわからないが、内部告発めいた暴露モノのような内容だった。

ディズニーランドというと、マニュアルで従業員をがんじがらめにしているようなイメージを持っていたのだが、本書によると(本当とは思えないが)バイト教育は皆無でまるっきり放置プレイ、皆バラバラに動いている、てな感じだったし、本社スタッフの露骨なエリート意識とか内部抗争は「夢の国」には全くふさわしくないものだった。そういえばタイトルもそういった内容に沿ったもののような気がしてきた。

いや、やっぱり単なる作り話かな・・・
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