蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

夜明けのすべて(小説)

2024年11月11日 | 本の感想
夜明けのすべて(小説)

映画を見た後に読んだ。映画は原作にかなり忠実に作られていた。違うのは主人公たちが勤務する会社の業種くらいだった。

映画もよかったけど、原作は一段と素晴らしかった。
映画だと、主人公ふたりの間に多少の恋情があるという雰囲気にしないと持たないと思えたけど、原作ではその点きっぱり二人の間の恋は否定されていたのもなんだか清々しい??
パニック障害の深刻さも小説の方が切実に感じさせられた。精神的に不安定な人がなるものだと思い込んでいたのだけど、むしろ元気いっぱい忙しく生活を送っている人がなりがちなんだとか。

終盤での、山添の以下の独白が特に良かった。
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働かないと生きていけないし、仕事がなければ毎日することもない。だから会社に勤めている。けれども、仕事のもたらすものはそれだけではない。自分のできることをほんの少しでも、何かの役に立ててみたい。自分の中にある考えを、何らかの形で表に出してみたい。そういう思いを、仕事は満たしてくれる。働くことで、漠然と目の前にある大量の時間に、少しは意味を持たせられる気がする。
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ファーストラヴ

2024年11月11日 | 本の感想
ファーストラヴ(島本理生 文春文庫)

女子大生の聖山環菜は父親殺しの容疑で捕らえられ裁判を控えていた。臨床心理士の真壁由紀は、その事件を描いたノンフィクションの執筆を依頼されて環菜と面会するが、環菜の供述は面会のたびに異なり・・・という話。

著者の作品を読むのは初めて。
会話にリアリティが感じられなくて、登場人物がそれぞれの役を演じている人のようで現実感がなく、事件の真相も、そりゃちょっと無理があるでしょ、って感じだった。

本作のテーマは、ひたすら犯行動機にあって、そこには確かに著者の主張が強く打ち出されている。
だからミステリとかサスペンスを期待して読み始めたのがいけなかったのかな?
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