蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

還暦からの底力

2022年05月18日 | 本の感想
還暦からの底力(出口治明 講談社現代新書)

大学生が就職する時、大学における学力は問われないので大学生は勉強しない。社会人になっても大切なのは社内調整と会社にいた時間なので、勉強しない。だから日本は低学歴社会になってしまった。
会社での意思決定がエピソードベースになっていて、ファクトに基づくエビデンスベースになっていない。
遅く帰宅して「食事・風呂・寝る」から、早く会社をひけて「人・本・旅」で人と会ったり学習したりすべき。

定年があるから、老後の資金が心配になり、貯蓄性向が高くなって消費が伸びない。年齢に関係なく能力に応じていつまでも働けるようにすれば解決する。
健康寿命を伸ばすには働くことが一番。家にいて運動しようとしてもサボりがち。仕事に行けばイヤで動かざるをえないから。
ヤングサポートオールドという考え方が間違っている。年齢を給付基準にせずに本当に困っている人にサポートを集中すべき。
日本の社会保険はまあまあよくできているし、賦課方式なので国家が存続する以上、一定の給付が続くはず。
・・・といったような趣旨だと思う。

まあ、大学の学長で印税が洪水のように振込まれてくる著者のような人なら、いくつになっても仕事やおカネの心配はないだろうけど、誰でもそうなれるわけではないしなあ。
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フォードVSフェラーリ

2022年05月17日 | 映画の感想
フォードVSフェラーリ

シェルビー(マット・デイモン)は1959年ルマン耐久レースを制するが、心臓病のために引退。アメリカでスポーツカーの開発・販売を行っていた。
1963年ヘンリー・フォード二世は、若者にウケが悪い会社のイメージを刷新しようとメジャーなレースへの参加をもくろみ、フェラーリを買収しようとするが、エンツォ・フェラーリにすげなくソデにされ自力でのルマン制覇を目指す。
リー・アイアコッカ(当時フォードの副社長)はシェルビーをチームマネージャとしてスカウトし、シェルビーは草レースの雄?ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)をドライバーにしようとする・・・という話。

アイアコッカと対立するもう一人の副社長(レオ・ビープ→中年のケンをプロジェクトのイメージに合わないと排斥しようとする。本作では悪役だが、実際は優れた経営者として評価されているらしい)を絡めて、創造的で勝ち抜ける組織作りはどうあるべきか?をテーマにしている。

シェルビーが、フォード二世を説得するためにとった秘策が面白かった。実話なのだろうか。

私くらいの世代にとっては、リー・アイアコッカはとても有名なアメリカ人なのだが、若い人に聞くと殆どの人が彼を知らなかった。そんなものなのか・・・
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八本目の槍

2022年05月16日 | 本の感想
八本目の槍(今村翔吾 新潮社)

賤ヶ岳の七本槍から見た石田三成を描く、という感じのタイトルになっているが、実際は七本槍個々の生涯を描く連作集。

冒頭の加藤虎之助清正の編が一番おもしろかった。清正は実は内務官僚的能力に優れていて、秀吉は彼を財務官にするつもりで、ために官名は主計頭だった、としている。戦闘指揮には自信がなかったが、朝鮮に出征した際に同僚から学んで才能を開花させた、ということになっている。
これが通説なのかどうか知らないのだが、清正が城郭設計の達人だったのは有名だし、「主計頭」の由来は「なるほどそうかも」と思えた。

大蔵卿局が脇坂甚内安治の古い知り合いで、実はすごい策士・・・というアイディアも楽しめた。(これはフィクションですよね?)

本作を貫く設定(三成はとてつもない先見性があり、関ケ原に敗れた後も家康の行動を制約する策を巡らしていた)は相当な力技?で、著者の意気込みみたいなものは感じられたけど、ちょっと凝りすぎで、リアリティに欠けているように思えた。
いくら三成が稀代の天才でも、デモクラシーやジェンダーまで意識していたというのは突飛すぎるでしょ?
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シン・ウルトラマン

2022年05月15日 | 映画の感想
シン・ウルトラマン

「シン・ゴジラ」は、ゴジラについて何も知らない人が見ても十分に楽しめたと思うが、「ウルトラマン」他の円谷作品について知識がないと本作の面白さは理解しがたいかもしれない。(そういう意味でハードルを上げてきたかな、という感じ。シン仮面ライダーは予告編を見る限り、原作マンガ(少年マンガとは思えないほど晦渋)をオマージュしてそうで、もっとハードルが上がりそう??)

例えば、メフィラス星人が見せるデモンストレーション?は、オリジナルを知らない人が見ると唐突感しかないだろうけど、オリジナルを見たことがあれば「こうきたか」と、大変に面白がることができそうだ。(今思うとオリジナルのこのシーンは、ミニチュアを使った特撮という制約を逆手に取った優れたアイディアだったんだなあ。イヤ、単なる予算不足だったのかもしれないが・・・)

ネタバレにならない程度に、他の例をいくつか紹介すると、
・冒頭の、禍特対の業績が紹介されるシーンに登場する禍威獣がすべてウルトラQの怪獣。
・ガボラとパゴスは実は同じ禍威獣なのでは?とのほのめかし。
・ウルトラマンはなぜすぐスペシウム光線を使わないのか?という疑問に対する回答(本作では使ってもいい時はすぐ使う)

音楽にはオリジナルのBGMが多用されているなど、探せば他にもオリジナルリスペクトの箇所がいっぱいありそうで、媒体が発売されたら、それを探してみるのがとても楽しそうだ。
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プロ野球元審判は知っている

2022年05月11日 | 本の感想
プロ野球元審判は知っている(佐々木昌信 ワニブックスPLUS新書)

著者はプロ野球の審判歴29年で現在は実家のお寺の住職。
全く野球界から離れてるせいか、けっこう本音レべルの証言(際どい判定が想定される場面はイヤだとか、判定直後に「しまった間違えた」と思うことがあるとか)も綴られている。以下、面白かったところを抜書き。括弧内は私の感想。

●館山は硬球を持つだけで重心がずれていること=変化させやすい がわかった。

●金子千尋の全盛期はダルビッシュより上と思えた。

●石川雅規は日本一ロジンバックを使う。(そういわれて見ると、フッと左手を吹くシーンをよくみるような気がする)

●藤川球児は基本ゾーンに投げるので、空振りか完全なボールのどちらかが多くて判定がラクだった。

●渡辺俊介の投球は遅くてなかなかミットまで到達しなかった。

●ノーノーやパーフェクトは、案外ピッチャーの調子が悪い時に起こる。2018年クライマックスでの菅野は球がバラけていた。山井の日シリの時も好調とはいえず、著者は8回までで交代だと思っていた。

●ピッチャーはリリース直前に目標を必ず見る。だからビンボールの時は打者を見ようとしてアゴがあがっている。

●逆球のサインもある(そうなんだ)。でも逆球だとボールと判定されがちなので、城島は逆球のサインを出すと、右手で球審=著者のスボンの裾をつまんで知らせた(いいのか?)。

●坂本勇人はプロ2年目のオープン戦で、西武の帆足から難しいインコースをホームラン。キャッチャーの炭谷が球審=著者に「普通打てないですよ、あそこは」といった。

●新庄は香水をつけてプレーする習慣を広げた。今では12球団のほとんどの選手が香水をつけている(そうなの?)。巨人の阿部は白檀、大谷翔平は自分で調合してた。

●大谷翔平は著者が四十肩で投手にボールを投げられないのを知って、イニング交代の時、走って球を取りに来てくれた。

●ストライク・ボールの判定を機械で行ったら、完封続出になると思う。(と、いうことは、現在の審判はかなり狭目のゾーン=打者有利にしているということ??)

●里崎は判定に文句を言わないことで有名で審判からは「仏」と呼ばれていた。(意外・・・)
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