リープフロッグ(野口悠紀雄 文春新書)
「後から来た者が、蛙の跳ぶがごとく先行者を追い越してしまう。それがリープフロッグだ」とカバーの紹介にある。
例えば中国でスマホや電子マネーが急速に普及したのは、固定電話網や金融システムが発達していなかったのが要因の一つとする。
他の例として
コールセンターやバック・ミドルオフィス業務のアウトソーシングで発展したアイルランドがあげられている。
一方、リープフロッグされた例としては
紙・羅針盤(造船・航海術)・火薬などの発明・利用で先行していた明時代までの中国、
産業革命後、電気技術の導入が遅れてリープフロッグされたイギリス、
などが挙げられている。
リープフロッグの原因は、こうした工学的技術のみではなく、技術を活用するためのビジネスモデルの創出が必要だ、という主張が面白い。
大航海時代を現出させた(非工学技術的)要因は保険や株式会社というビジネスモデルの発明だという説は、なるほど、と感心させられた。
大航海時代や産業革命の頃と比べて、現代では国や国民の意味合いが薄くなってきている。国同士の経済力(例えばGDP)を比較して一喜一憂するのはナンセンスかもしれない。著者は、まとめとしてリープフロッグを国の間のみで起こるものではなくて個人間でも同じ現象があるとして、次のように述べている。(以下引用)
「しかし、日本社会は、基本的な構造においては逆転が可能な社会です。初等教育はすべての国民に与えられていますし、職業の世襲制もそれほど一般的ではありません。実際、高度成長期の日本では故人や企業の逆転現象が頻繁に起こりました。(中略)ところが、こうした活力が、いまの日本では失われていると感じます。では、日本では、高度成長期に比べて社会的制約が増したのでしょうか?そうではなく、人々が獲得した豊かさに満足してしまって、逆転をしようという意欲を喪失してしまったのではないでしょうか?つまり可能性がなくなったのではなく、小市民的な生活に安住してしまった人が増えたことが問題なのではないでしょうか?そうだとすれば、考え方を変えれば、今の日本でもかつての日本のように逆転勝ちをすることが充分可能なはずです」