“たとえ薔薇が別の名を付けられていたとしても、薔薇の香りは変わらない”とある本に書かれていたけれど、もしキャベツという名前だったら、これほど素敵じゃないと思うわ、と。
そのようなことを、赤毛のアンが言っていました。
名前からは、やはり言霊を感じますね。
同じものを指していても、言葉によって、響きや印象が違う。
また、その言語圏独特の文化や価値観から生じる名前もある。
今回は日本語・他言語取り混ぜて、言葉の美しさを堪能しました。
『色の名前』 近江 源太郎 ネイチャープロ編集室 角川書店 2000
リンダ・ハワードの『パーティー・ガール』で、
その男性がゲイかどうか確かめるために、
ピュースが何色か尋ねる、という話がありました。
(答えは、赤みがかった茶色。一般的に知られた名前ではないのでしょう)
そのピュースの由来が、血を吸ったノミの色とは。
英語の色の捉え方は面白いです。
他にも、狩猟民族らしく、動物の毛皮の色を表す言葉が印象的でした。
好きな色、という観点から見ると、
純白、ベージュ、クリーム、オールドローズ、桜、葡萄色(えびいろ)、
勿忘草色、ラベンダー色、マルベリー色、チョコレート色、
バーガンディー、ボルドー、シャンパーニュ、などがいいなーと思いました。
色彩学の話も掲載されていて、
人それぞれ見ている色の認識が違う、と書いてあったのですが、
読みながらすでに「えっ、この名前でこの色を指すのー?
もっとはかなく褪せたような色なんじゃない?」と思っていたものだから、納得。
目の仕組みもあるのだろうけど、記憶も曖昧だし、
思い出というフィルターを通して回想するから、
“あの色はこんな感じ”という思い込みが、誰しもあるのでしょうね。
『空の名前』高橋健司 角川書店 1999
好きな名前を列挙してみる。
朧雲。花曇。朧月夜。
シシリー島で、エトナ山頂付近の笠雲や吊し雲を呼ぶ言葉、風の伯爵夫人。
幻日。黄昏。夕映え。翠雨。風花。
中国語で“大きな雪がひらひらと落ちてくる”ことを、
片々雪花(ピェンピェンシュエホア)。
そっと口にするだけで、様々な光景が目に浮かんできます。
これは立派な写真集でもあって、言葉に相応しい一葉が選ばれています。
“風光る”の項の写真には、なるほど、と思う。
目に見えない風をこんなふうに表現するのはすごいです。
『宙の名前』 林完次 角川書店 1999
天体写真がいっぱいー!本当に綺麗です♪
こんなに雰囲気の違う空を一度に見れるなんて、贅沢。
白鳥座の、アルビレオの二重星、“天上の宝石”と言うのですね。
カシオペア座、昔ラコニアという国では、“ラコニアの鍵”と呼ばれていたそうです。
兎座のR星は、クリムズン・スター(深紅の星)。カッコいい…。
あと、言葉だけ耳に残っていて、意味を知らなかった“雨降りヒヤデス”。
“昔、太陽とヒヤデス星団が同時に上がるころ雨季を向かえたため”
“ギリシア語のヒュエイン(雨降り)に似ていたから”などの理由があるとのこと。
分かったような分からないような(笑)。
でも言葉って、こんな感じに無意識に入って、残っていくもんですね。
天文学の知識ゼロなくせに、一体どこから覚えたのでしょう?