医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

糖尿病による腎障害には薬剤の選択よりも血圧を下げる事の方が重要である

2005年12月21日 | 循環器
前回まで、カルシウム拮抗薬のなかではノルバスクが唯一「心臓の血管の風船治療やバイパス手術を減らす」、「狭心症による入院を減らす」効果を持つことをお伝えしました。

また以前、高血圧症の薬には
カルシウムチャンネル・ブロッカー(カルシウム拮抗薬)
利尿剤
アルファー・ブロッカー(α遮断薬)
ベータ・ブロッカー(β遮断薬)
アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害剤)
アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
があり、その選択は医者の裁量にまかされている事もお伝えしました(10月22日)。

最近の新しいタイプの薬としてアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害剤)やアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)があり、それらの薬には腎臓に対して保護作用があると盛んに宣伝されています。
そこで今月のLancet. 2005;366:2026.からの報告です。

Effect of inhibitors of the renin-angiotensin system and other antihypertensive drugs on renal outcomes: systematic review and meta-analysis.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

この報告は過去の無作為大規模臨床試験の結果をまとめたメタアナリシスです。

他の薬剤との比較試験では、ACE阻害剤やARB投与群がその他の抗高血圧薬投与群に比べて、クレアチニンという腎障害で上昇する物質が2倍になる相対リスクは0.71倍、末期腎不全になる相対リスクは0.87倍で、僅かな有用性がありました。臨床試験の規模が大きくなるほど、ACE阻害剤とARBの有用性は小さくなりました。

ただし、糖尿病による腎障害患者では、ACE阻害剤とARBの有用性はないことが、クレアチニン倍増(相対リスク1.09倍)、末期腎不全(相対リスク0.89)、アルブミン尿、糸球体濾過速度のいずれについても示されました。

また、糖尿病による腎障害患者に対する非投与群との対照比較試験によれば、ACE阻害剤とARBによる有用性はすべての腎転帰項目について認められたのですが、ACE阻害剤およびARBの選択という事よりも血圧の低減の程度のほうが大きく優っていることも示されました。

つまり、糖尿病でない患者さんの腎障害に対してはACE阻害剤とARBの腎臓保護作用は認められますが、糖尿病による腎障害には薬剤を色々と選択するよりも、どんな薬を使ってでもいいから、血圧を出来るだけ下げる事が重要であるという事です。

著者らは最後に「今回の分析を見ると、糖尿病における腎疾患での高血圧の治療方針の選択は、血圧降下作用、経費に基づいて行うべきである」と結論づけています。

ちなみに薬価は
ノルバスク(カルシウム拮抗薬)(5mg:標準一日使用料、以下同様)93円
レニベース(ACE阻害剤)(5mg)97円
エースコール(ACE阻害剤)(2mg)104円

ニューロタン(ARB)(50mg)210円
ブロプレス(ARB)(8mg)205円
ディオバン(ARB)(80mg)175円
ミカルディス(ARB)(40mg)193円
オルメテック(ARB)(20mg)189円

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
くすり (おっさん)
2008-06-17 09:52:41
心臓血管外科のDrに腎不全を診て貰ってますが。少々不安ですね。腎不全の薬はクレメジンのジェネリックのみで、腎臓の状況は極めて悪い状態です。ノルバスク、利尿剤、アマリール、その他飲んでます。全て血圧を下げる作用があり、フラフラになります。血圧は、160/98 心拍数100
糖尿病、狭心症にてバイパス手術済み。
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