医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

親が医師の治療計画について質問すると抗生物質の処方が増える

2006年09月19日 | 小児科
以前、小児に対して安易な抗生剤の処方はよくないとお伝えしました。
今月、親が医者に治療計画について質問すると、医者は抗生剤の処方が期待されていると考え、処方が増えるというユニークな論文が発表されました。

Ruling out the need for antibiotics: are we sending the right message?
Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine. 2006;160:945.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)

この研究は、2000年から2001年の間にロサンゼルスの小児科医院27カ所において、38名の医者の風邪の症状が端緒となった外来診察522回分のやりとりをビデオテープに録画・解析し行われました。また、診察後に医者にアンケートを行い、親が抗生物質を期待しているかどうかについての自分達の受け止め方がスコア化され、不適切な抗生物質の処方についての主要な予測因子が多変量解析で決定されました。

結果は、(1) 医師が抗生物質の必要性がないと親に告げた場合に、親が医師に治療計画を質問する傾向が24.0%強くなりました(P=0.004)。また、(2) 親が医師の治療計画について質問する時に、親は抗生物質を期待していると医師が受けとめる傾向が20.2%強くなりました(P=0.004)。そして、(3) 親が抗生物質を期待していると医師が感じた場合は、医師が不適切な処方をする傾向が31.7%強くなりました(P<0.001)。 つまり、親が医師に対して治療計画について尋ねると、抗生物質が期待されていると医師が感じる傾向が強まり、親の期待を受けとめようと不適切な抗生物質の処方が増えたのでした。

研究の限界として、医師のサンプル数が少ないこと、ビデオテープ録画による影響が未知であることがあります。


医者A  「風邪ですから抗生物質は必要ないです。水分を十分に摂って安静にさせて下さい」

親B    「こんなに熱が高いのに、ばい菌で風邪がこじれたりしませんか?」

医者A   (確かに細菌感染を合併する可能性はゼロではないな~。でも予防目的で抗生物質を処方しても無意味だし~~。でも、抗生物質の予防的投与により細菌感染の合併は防げないのに、子供が細菌感染を合併したら、こういう親は医者に責任があると訴えないだろうか?割り箸事故のこともあるしな~~)
    
      「それじゃあ抗生物質も出しておきますね」

という具合でしょうか。

大切なことは、医者は患者さんに根気強く抗生物質が必要でないこと、抗生物質の予防的投与でも細菌感染の合併率は減らせないことを説明し、患者さんの方は、万が一細菌感染を合併してもそれは医者の判断が間違っていたからではないことを認めることです。


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