配信で、久しぶりに再見した2作品です。
ノッティングヒルの恋人 (Notting Hill) 1999
この映画は、公開時にアメリカの劇場で見て、その後日本のテレビで偶然見て、今回見るのが3度目でしたが、何度見てもおもしろい。そして最後の記者会見の場面では、何度見ても号泣してしまいます。序盤で、スパイクがTシャツ着て階段を下りてくるところから
オチがわかっているのに、にやにやが止まらない。アナの I am just a girl. は、いつか使いたいと思いながら、いまだに使うチャンスがない。ヒューが Horse & Hound を持ち出す度に笑い転げてしまう。それもこれも、リチャード・カーティスの脚本がすばらしいから。
主演のジュリア・ロバーツとヒュー・グラントはじめ、登場人物がみな魅力的で、ノッティング・ヒルという舞台が魅力的で、そして何よりエルヴィス・コステロの「She」が魅力的。私にはエターナル・ベストというべき、大好きな作品です。
サタデー・ナイト・フィーバー (Saturday Night Fever) 1977
公開時に劇場で見て以来の再見です。当時はビージーズの音楽とトラボルタのダンスばかりが印象に残っていましたが、年を重ね、経験を重ねた今改めて見ると、さまざまな気づきがありました。以下思いつくままに書いていきます。
ウエストサイド物語 (1961) へのオマージュ
ブルックリンの空撮からはじまるオープニング、プエルトリコ移民との確執など「ウエストサイド物語」を彷彿とさせる場面がいくつもありました。主人公の名前も同じくトニー。トニーは悪友たちとつきあっていますが、実はまじめで、頭がきれる青年です。
トニーが恋をするステファニーは、これまでトニーの周りにいた女性たちとはまったく違うタイプ。彼女の白いドレスは、ウエストサイドのマリアを彷彿とさせました。名前がマリアではないのは、上昇志向の強いステファニーが、自分のステップアップのために
有力者の愛人となっているからと理解しました。ステファニーの鼻持ちならない自慢話の数々は、実は劣等感の裏返しなのでしょう。でもトニーは彼女と出会ったことで、これまでの生き方を変える決心をするのです。
トニーの部屋と、狼たちの午後
ファラ・フォーセット、ブルース・リーなど、当時のスターたちのポスターが懐かしい。アル・パチーノに似ていると言われたトニーは、自室のアル・パチーノのポスターに向かって、似ているかな?と自問します。
そのあとの「アッティカ!アッティカ!」(映画ではアディゴ!アディゴ!と聞こえる) というセリフは、映画「狼たちの午後」(Dog Day Afternoon・1975) の一場面ですが、これも映画を見たからこそ、わかったことです。
イタリア系移民と、ブルックリンの今むかし
ブルックリンに住むイタリア系移民の物語といって思い出すのは、シェールの「月の輝く夜に」(Moonstruck・1987)。月の輝く~はイタリア系らしい大家族の心温まる物語でしたが、本作のトニーを取り巻く環境はあまり芳しいとはいえません。
口うるさく、いがみあってばかりの両親。お世辞にも素行がいいとはいえない友人たち。勤務先のペンキ店では仕事ぶりを評価されているけれど、長年働いたところでいいことなんてひとつもない。先の見えない閉塞感の中で、トニーが唯一誇れるものがダンスでした。
当時、白人といっても下層に位置していたイタリア系は、マンハッタンではなく下町のブルックリンに住んでいましたが、そのブルックリンも今は様変わりしています。マンハッタンの家賃の高騰により、ソーホーに住んでいたアーティストたちが
家賃の安いブルックリンに移り住むようになったのを機に、今ではすっかり人気のおしゃれエリアに。2015年の映画「マイ・インターン」(The Intern) ではアン・ハサウェイ演じるイーコマースの社長が、ブルックリンのれんが造りの倉庫をオフィスにしています。
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人種差別、性差別、格差、暴力など、当時の社会問題 (と認識されていたかどうかわかりませんが) が生々しく描かれていて、単なるディスコ映画ではなかったことを、今さらながら知りました。それだけでも見る価値のある作品でした。