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ある男(映画)

2022年12月04日 | 映画

池袋でお昼を食べた後に、久しぶりに映画館で映画を見ました。しかも私にはめずらしく邦画です。グランドシネマサンシャイン池袋は初めて入った映画館ですが、改装してまだ3年とのことで、新しくてきれいでした。

ある男

平野啓一郎さんの同名小説の映画化です。原作がすごくおもしろかったのと、今回の映画化がとてもよくできているという予感があったので、本作を見るのを楽しみにしていました。

そして期待通りにとてもよかった! 原作は、衝撃的な事実を抑えるかのように、静かに淡々とストーリーが語られていくのですが、映画は登場人物の内なる激しさが演技によって表現され、ぐっと心に迫る作品になっていました。

特に、物語の鍵となる、谷口大祐を演じる窪田正孝さんの、狂気と孤独が宿った演技は圧巻のひとことでした。窪田正孝さん、私はたぶん彼が演じる作品を見るのはこれが初めてと思いますが、とてもよい役者さんだなーと感動しました。

相手役を演じる安藤サクラさんは、当初は小説のイメージと違うように思ったのですが、映画を見ると彼女以外には考えられないというほど役にはまっていました。辛い過去をもつ2人のかけがえのない4年間。子どもたちもほんとうにいい子に育っていて

できればいつまでも、この幸せを見守っていたかった...。終盤の男の子のことばには、幼いながらも家族を思い、しっかり前を向いて生きていく決意のようなものが感じられて、胸が締め付けられました。

私は平野さんのことばの紡ぎ方、登場人物の気持ちをていねいに掬い取るような描写が好きなので、映画化にあたっては、楽しみな反面、一抹の不安もありました。長編小説を2時間の映画にするにあたって、どの部分を残すか、どのようにストーリーを組み立てるか

監督の葛藤があったと思いますが、取捨選択がみごとで、原作の世界観を大切にしながら、映画ならではのアクティブな作品になっていたのがよかったです。そして映画を見たら、もう一度小説を読み直したくなりました。

本作のアイデンティティというテーマは深く、ストーリーも重めではあるのですが、物語がミステリータッチで進むので謎解きとしてのおもしろさもあるし、考えさせられる作品になっています。

本作とはまったく無関係ですが、私は映画を見ながら、昨今増えている、自分の顔や体にメスを入れ、人生が変わったと告白する人たちのことを、ふと考えてしまいました...。

お勧めの作品です。

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