@数十年前の事件が現代に生きる世代を超えた家族まで巻き込む、この奥深い諸説だ。それは凶悪で未解決事件だったことが、家族に残された遺品と新聞社の執念が呼び興す。「知らぬが仏」、それにメスが入る、だが最後に離れ離れにされた家族に未来が見える。恨み辛みは必ずや世代を超えても残るということ、だがそれを克服して影に生き残る人々は現代でもあるだろう。
『罪の声』塩田武士
家族の古い過去を知る事の恐怖、ましてや30数年前に世間を恐怖に巻き込んだ凶悪未解決事件に関係するとなれば尚更だ。この小説は事件の裏に2つの加害者であり被害者となった家族があった。事件の計画を練り生きて海外に定住者となっている叔父、計画を依頼、実行した元暴対刑事と9名の共犯者だった。きっかけは叔父の父が受けた企業の疎遠扱い恨み、また、元暴対刑事が生活資金繰りの為、と暴対で知り合ったヤクザ等の仲間たちと企業4社を脅迫事件へと巻き込んだ。最初は企業脅迫を海外の事例を元に実行して現金を奪うことより株価操作で儲けようとした。その為司法の権力ー警察、経済の権力ー企業、それらの弱みを握るマスコミに巧みな文章で挑戦状と脅迫状を送付、市民の賛同を得ようとした。 だが結果的にヤクザが求める現金にも欲が内部分裂起こし、如いてはそれが2つの家族をどん底に陥れて悲惨な出来事にまで巻き込んだ。