@家族が異父兄妹、年少の頃から性的虐待など、誘拐犯の被害者が実は加害者で、その加害者が多くの無残な殺害をしていく、ところがその加害者を最後に抹殺する兄妹、このミステリー小説に出てくる事件の深さには驚愕する。人は生活環境(家庭環境、仕事環境)など友人関係が意外な性格と習性を作り出す。最も必要なのは家族愛がその基盤なのかと思い知らされる。
『その女アレックス』ピエール・ルメートル
・「おまえが死ぬのを見たい」――誘拐事件、男はそう言って女を監禁した。檻に幽閉され、衰弱した女は死を目前に脱出を図るが……。孤独な女の壮絶な秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進する。
・女は仕事も定職ではなく派遣、30過ぎて結婚も諦め孤独を楽しむ。その一つがカツラで変身する事、それが「淫売女」と見えたのか誘拐事件となる。目撃者は一人でその現場から分かった事は監視ビデオに写っていた白のバン、誘拐したのは大柄で腕力のある男、誘拐された女は何一つ特徴がない。職場、家族、友達等からの捜査願いも全くない、孤独な女と判断される。
・男は誘拐後、古い建物の中で小さな檻に全裸にして体を折りたたむように閉じ込める。「淫売がくたばるところを見てやる」とネズミが餌を求め徘徊する場所に閉じ込める。
・事件は白のバン、犯人が連れ去った車から犯人を特定、住処で逮捕を計画したが逃亡され挙句には犯人は高速道路の上から飛び降り自殺してしまう。携帯電話に残っていた写真から誘拐された女は1週間経ったがどこかでまだ生きている事だった。男は離婚歴のある50過ぎ、精神異常を患った息子を探していたと言う。その息子を知る女を探すと友人の部屋の屋上でその息子が水槽で死体で発見される。致命傷は硫酸を飲まされた殺人事件となる。
・ある日、若者が古い建物にペイントしようとした時建物の中に何か動くものがいると警察に通知、現場につくと数匹のネズミの死体に、人間の血に飢えたネズミ、それと壊れた檻を発見したが誘拐された女がいない。警察は、女に殺人の容疑を立てる。それは誘拐した男はこの女が息子の居場所を知っていると思い聞き出そうとした。実は息子の性格からも帰宅しないのはこの女に何かされたと疑っていた。もう一つはこの女が過去に付き合った男たちが硫酸を飲まされ無残な死体となって発見された事だった。
・女は辛うじて家にたどり着き治療、食事、睡眠などした後、引越しをする。その先に宿を経営する女主と親しくなるが、深夜過去と同じように最後に硫酸を飲ませ殺害をする。 その後、最後の男、トラックの運転手も同じように硫酸で殺害する。そして女はすべてを終えた事でスイスに逃亡する計画を立て、異兄妹である兄を呼び出した。 逃亡するための翌日の航空チケット、ホテルからタクシーの予約、私物の処理を終えホテルに戻る。
・翌日その女が自殺体として発見される。殺害容疑者が何故6人もの人々を殺害したのか、何故完全逃亡計画したにもかかわらずホテルの部屋で自殺しなければらなかったのか。事件はその後急展開を見せ、親族関係が拘留される。それは性的虐待、加重買春斡旋、証拠隠滅殺人罪となる。
