山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

ある総合病院の再生と急成長

2007-01-13 23:36:22 | 独り言
これは、たった10年という短い歳月で、傾きかけた総合病院を再生し、そのうえ更に老健施設と特養老人ホ-ムを創り上げた若き院長の物語です。

10年前、まだ40代後半の若き医師が、赤字続きで傾きかけた総合病院に乗り込んだところから話は始まります。赤字続きの原因は、当時の院長や総婦長など幹部の高齢化と、将来に希望が持てない若きスタッフのモチベ-ションの低下にありました。

乗り込んだ若き医師が院長に就任すると、直ちに改革が始まりました。
先ず人事。高齢化してやる気の失せた幹部には勇退頂き、能力ある若きスタッフを幹部に登用。この人事は、残った若きスタッフ達に危機感と希望を与える効果絶大でした。向上心がなければ排除されるという危機感と、能力を発揮すれば登用されるという希望。これでうちの病院も再生するという将来への大きな希望が生まれました。

次に内外装の手入れと先進設備への更新、入院施設の増床、看護スタッフの増員。これによって良い職場環境の中で良質の医療を提供できるという誇りが蘇りました。どんなスタッフでも医療従事者としての高邁な誇りを持ち、それを実現したいと頑張っています。それを理解し実現してくれる院長に共感しない訳がありません。

次に、午前中しか受け入れなかった外来患者を午後も受け入れることとしました。
患者のニ-ズに応え地域医療に貢献することが病院の使命であるわけですから。

次に、外科スタッフの充実。若き院長も副院長も外科医、外科部長もヘッドハンティングで優秀な外科医を招聘しました。実は、これらの改革には、ある伏線があったのです。

それまでは、外来患者の診察も午前のみ、救急患者の受け入れも消極的、これでは病棟の入院患者が増えるわけがありません。すべて幹部のやる気のなさが招いたことでした。病棟を満室にしなければ病院経営は立ちゆきません。

外来患者が1週間以上の入院に結びつくのは2%程度、これに比べて救急患者が1週間以上の入院に結びつくのは20%以上。10倍以上の違いがあるわけなんですね。

そこで院長は、救急を受け入れるべく地域の消防署の救急隊を巡って救急の積極的な受け入れを訴えてまわりました。院長をはじめベテランの外科医が必ず当直医として詰めていること、絶対に救急を断らないことを強く訴えた訳ですね。そのために先進設備を導入し、ベテラン外科医を揃えて受け入れ態勢を充実させた訳なんですね。

救急を100%受け入れてくれる、そして高い救命率。次第に救急隊の信頼を勝ち取り、病棟が常時満杯になって経営が安定し成長軌道に乗るのにさして時間を要することもありませんでした。勿論、院長も副院長も外科部長もフル回転、いきいきと激務をこなしていることは言うまでもありません。

成長軌道にのってしまうと、銀行も役所も見る目がちがってきます。優秀なスタッフも集まってきます。院長の夢であった老健施設と特養老人ホ-ムの開設も順調に進み、今では数百人のスタッフを抱えるまでに急成長を遂げています。

ここで特筆すべきは、幹部スタッフへの権限委譲でしょうか。なにせ総勢数百人。権限委譲が最重要課題となるわけですね。医局、看護部門、事務部門、企画部門、渉外部門などの主要なポストには信頼できる人材を配置し、権限を委譲する。信頼されて権限委譲された人間はプライドを持って仕事をします。院長は度々彼らを食事に誘い、ねぎらい、感謝の言葉を伝え、和気藹々と飲食を共にします。

忙しい中でも、なんとか時間を工面し、良く呑み、日常のことを良く語り合い、夢を理解し合う。信頼関係とは、そんな中で生まれるのかもしれません。私もかれこれ25年、前の病院時代からおつきあいをさせて頂いていますが、周りの人間を思いやる暖かさ、スタッフを信頼しながら壮大な夢を淡々と実現してゆく力強さに憧れている次第です。

最後に一つ、この病院には複雑怪奇な人事評価マニュアルなんてありません。
有るのは職域別に、全スタッフ共通の極々シンプルな給与体系のみです。あとは、業績と能力に応じて、幹部会議で賞与と昇給を大まかに決めて加算しています。
それがお手盛りであっても、他の病院よりも元々の給与が高水準で、仕事にやりがいが持て、将来への安心感があり、ねぎらいと感謝の言葉がもらえる。業績が良ければこれで充分だと思いますね。

これからの歯科医院も、規模拡大に伴って、各部門にふさわしいリ-ダ-を置き、医院運営を担う事務局を設け、組織の形態を整える必要があります。そして、少なくとも月1回の経営会議の中で、幹部間の意思統一と相互理解を深めていくこと。そのためには先ず、経営内容のある程度の公開がどうしても必要になってきます。



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