山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

霧の華

2014-03-15 22:10:53 | 山歩き.散歩
毎年この季節は野草の若芽を摘んで味わうのが早春の儀式になっていたのだけれど
どこもかしこも雪に埋もれて藪甘草も野蒜もアザミもヨメナも見つけることが叶わない。

早朝、相模湖東ICを下りて車をころがしていると大室山一帯に濃い霧がかかっているのが見えた。
しばらくすると深い霧が晴れて青空がのぞく、山には一面に真っ白な霧氷がついていた。
加入道山や大室山に居合わせたなら一瞬のうちに幻想的な世界に変わってゆく様を目の当たりにできただろうにと後悔して石砂山に向かった。





石砂山に向かう林道に入って高度を上げて行くと前が見えないほどの濃い霧に包まれ始める。
もしやこれは、、、、と期待を抱きつつ急いでザックを担いで登山道を進む。






おぉ、ファンタスティック!
この山は大室や加入道山に比べたら樹木も小さいし標高も低いので霧氷の規模は格段に小さいけれど
それでも木々の枝に咲いた純白の霧の結晶はキラキラと輝いてそれはそれは幻想的で魅入ってしまう。






石砂山にはもう数えきれないほど登っているけれど霧氷に遭遇したのはこれが初めてのことであろうか?
太陽に照らされると真っ白な結晶はまるで雪が降るようにはらはらと舞い落ちて儚く消えてゆく。








三つ葉ツツジに咲いた霧の華、山はエクスタシ-に満ちている。





てっぺんから眺めると大室山も加入道山も一面に霧氷がついているのが良くわかる。
あの山に立っている人たちは、今頃は多分めくるめく幻想の世界に浸っていることだろう。





いつものベンチに腰を落ち着けると、道志川を隔てた丹沢の山々が墨絵のように見える。
豚汁と炒めたハムをつまみにビ-ル2本と鬼殺しを時間をかけてじっくりと味わう、旨し!



 



ラ-メンはインスタント、されど、実に旨し!





ほろ酔い加減で一気に本を読む『あした死ぬかもよ』
感想→いま充実した人生を送っている人ならば取り立てて読む必要はない!





下山しようとてっぺんに立ち寄ると10数人の中高年の団体さんが2つのベンチで楽しそうに食事をしていた。
僕の姿を見とめて慌てて席を空けようとしてくれた方々に、下で済ませたので結構ですよと笑顔を返した。
こんな風に山のマナ-をわきまえた方々に接すると、嬉しくて実に気分がよい。

途中で肉厚の天然シイタケを見つけて持ち帰った、天ぷらがいい。

 



春蘭の根本に伸び始めた蕾をふたつ見つけた、初々しい蕾に春の息吹を感じて優しい気持ちにさせてもらった。






今年は大雪のために季節の進むのが少し遅れている。
タチツボスミレもモミジイチゴもまだつぼみも出来ていない。
春の女神が狂乱する恋の季節は3月末あたりからであろうか?
この山にまたエクスタシ-に満ちた季節がやってくる!


自然の織りなす不思議、こんな幸運に恵まれた一日に感謝したいと思います!








コメント (24)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ディアスポラ

2014-03-10 02:22:51 | 書籍
ディアスポラとは、植物の種などが撒き散らされることを意味するらしい。
そうであるならば、タンポポが風に乗り、木いちごが野鳥を媒体として植生地を広げ種族を繁栄させるという未来志向の明るい話になる。

しかし、この書で描かれているディアスポラはそうではない。
日本という国土と国家を失い、様々な国々に離散して暮らす日本人の集団が描かれている。

破滅的な原発事故で日本列島が居住不能となり、チベットの難民キャンプで将来の希望も見いだせないまま懸命に日本人として生きようとする人々
言葉も通じない国で、仕事もなく、粗末な住居に住み配給される食料で今日一日の命をつなぐ生活の中で日本人としてのアイデンティティ-が保てるものだろうか?

日本に残ることを選択したいくつかの家族も、放射能被ばくによって次々と家族や親しい友を失っていく悲哀。
水も山菜もキノコも鹿も猪もウサギも放射能に汚染されて食料にすることも出来ず限られた食料と水でどうやって生き延びられようか?





驚くのは、この書が東日本大震災の10年も前に描かれた書であり、極めて暗示的とも予言的とも受け取れる書であることである。

福島原発で町や土地を失った人たちは日本の国土や同胞の中で暮らせるだけでもまだ幸いといえようが、
それでも慣れない土地で将来を描けない不安、拠り所となるふる里に帰れないもどかしさや葛藤は恵まれた我らには想像もできない。
ましてや日本という国土と国家を失い、世界中の見知らぬ土地で肩身の狭い暮らしを続け将来を見通せない絶望感はイメ-ジすることさえ難しい。






原発ホワイトアウト、現役キャリア官僚が著した告発本である。

福島原発事故で盛り上がった国民の脱原発意識などすぐに薄れてしまうことなど権力は端から見通していた。
モンスタ-システムともいえる政財官の強固な融合体が着々と原発再稼働を画策する様が手に取るように良くわかる。





日本の裏支配体制を見るにつけ絶望的になる。
科学技術に絶対はありえない。
それはチェルノブイリで、スリ-マイル島で、福島で明らかになっている。

いち早く脱原発を宣言して動き出した国々もあるというのに日本は福島から何も学んでいないのであろうか?

50年後、100年後、我らの子や孫がこの国を捨てて彷徨える民族にならないことを切に願う!



コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする