山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

ディアスポラ

2014-03-10 02:22:51 | 書籍
ディアスポラとは、植物の種などが撒き散らされることを意味するらしい。
そうであるならば、タンポポが風に乗り、木いちごが野鳥を媒体として植生地を広げ種族を繁栄させるという未来志向の明るい話になる。

しかし、この書で描かれているディアスポラはそうではない。
日本という国土と国家を失い、様々な国々に離散して暮らす日本人の集団が描かれている。

破滅的な原発事故で日本列島が居住不能となり、チベットの難民キャンプで将来の希望も見いだせないまま懸命に日本人として生きようとする人々
言葉も通じない国で、仕事もなく、粗末な住居に住み配給される食料で今日一日の命をつなぐ生活の中で日本人としてのアイデンティティ-が保てるものだろうか?

日本に残ることを選択したいくつかの家族も、放射能被ばくによって次々と家族や親しい友を失っていく悲哀。
水も山菜もキノコも鹿も猪もウサギも放射能に汚染されて食料にすることも出来ず限られた食料と水でどうやって生き延びられようか?





驚くのは、この書が東日本大震災の10年も前に描かれた書であり、極めて暗示的とも予言的とも受け取れる書であることである。

福島原発で町や土地を失った人たちは日本の国土や同胞の中で暮らせるだけでもまだ幸いといえようが、
それでも慣れない土地で将来を描けない不安、拠り所となるふる里に帰れないもどかしさや葛藤は恵まれた我らには想像もできない。
ましてや日本という国土と国家を失い、世界中の見知らぬ土地で肩身の狭い暮らしを続け将来を見通せない絶望感はイメ-ジすることさえ難しい。






原発ホワイトアウト、現役キャリア官僚が著した告発本である。

福島原発事故で盛り上がった国民の脱原発意識などすぐに薄れてしまうことなど権力は端から見通していた。
モンスタ-システムともいえる政財官の強固な融合体が着々と原発再稼働を画策する様が手に取るように良くわかる。





日本の裏支配体制を見るにつけ絶望的になる。
科学技術に絶対はありえない。
それはチェルノブイリで、スリ-マイル島で、福島で明らかになっている。

いち早く脱原発を宣言して動き出した国々もあるというのに日本は福島から何も学んでいないのであろうか?

50年後、100年後、我らの子や孫がこの国を捨てて彷徨える民族にならないことを切に願う!



コメント (14)
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