


30数年前になるが、新聞で野坂昭如さんが「ゴキブリを殺すのに自分は殺虫剤でシューとやったり、薬を置いたりしない。」と書いていた。要は自らの手で殺すべきだと言うのだ。ハエたたきでたたいた時にゴキブリの断末魔のもがきが手に残る。それが大事なのだという主旨だった。ベトナム戦争でのアメリカの空爆、枯れ葉作戦などの記憶が生々しかった時、安易に薬にたよっていたことへの思い返しがあった。そのことを母方の祖母に話すと「わたしなんかゴキブリは手づかみで捕まえる」と言った。半信半疑の顔をしているとちょうどいいタイミングでゴキブリが現れた。ティッシュペーパー1枚を手にした祖母、気配もなく近づいたと思ったら居合抜きのような手の動きで鷲掴み。恐れ入りの進であった。
そんなこんなを思いだしながら朝夕、3本のピラカンサスの木の枝や葉に忍者のごとく擬態を駆使してひそむ毛虫を取る毎日となった。30匹でやめることにしている。100%を目指したらかぎりない泥沼に陥ること間違いなし。夕方などは毛虫の数だけ蚊も私の周りをブンブンと飛び回ってくるのでさっさとノルマを達成して退散することにしている。
しばらくは続きそう。雨が降ってくれればなと勝手な希望を抱いている。