《巻頭エッセイ》
「ゲーム散歩・吟行」の試み 吉良 香織
令和2年8月12日、勤め先の換気の良い教室で、有志の司書と学生ボランティアとで「ゲーム散歩・吟行」を敢行した。
ゲーム好きの同僚が、インターネットから見つけた「ゲーム散歩」というイベントを本学の学生にも体験してもらいたいと開いた、催しである。
プレイステーション4「ゴースト・オブ・ツシマ」、Nintendo Switch「集まれ動物の森」を学生に操作してもらい、ゲーム好きは画面を観覧。俳句が詠めそうな人には、画面から季語を見つけては俳句を詠んでもらった。できた句がこちら。
〈吟行地「ゴースト・オブ・ツシマ」4句〉
木漏れ日の中から見下ろす猛き熊 学生句
夏風に吹かれて出会う狐かな 学生句
なりゆきで熊と闘いゆく夏路 香織
戦い疲れればトリカブト手に余るほど 香織
〈吟行地「集まれ動物の森」2句〉
夏休みならばスズキもバッタもポッケに 香織
夏帽子被れば友の来る気配 香織
出来、不出来は今回不問。刀を振るうアクションゲーム・ほのぼのとした動物の森、と舞台の雰囲気が句から伝わってくるのでこれでよしとした。
これが新しい吟行の形かどうかの判断は、時期尚早かと思う(第一手間が掛かる)。ゲーム画面を見ながら作句も可能という事を確認できたのが、今回自分にとって一番の収穫であった。
昨年度から現代俳句協会に入会しました、吉良香織と申します。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。
《30年永年会員 記念作品》
『現代俳句』2020年12月号より
終章をぽっと照らして椿落つ 木庭 杏子
きらきらと余生に逸る秋景色 志賀 孝子
春は曙熊本平野ぴょんと跳ぶ 田上 公代
《私の一句自句自解》
もう一人母の居そうな花の雨
丘 菜月
俳句と出合って年月を重ねてきたが、これほど長く何かを続けた事は無く、向き合う時間を楽しんでいる。脚を悪くしてからは外出も少ないが、何十年分もの思い出が季語と共にふつふつと浮かんで来る事を喜んでいる。
四年前に逝った母は桜色がよく似合った。無口で物静かだった母を桜色の中に詠み続けていきたい。
☆ 第4回「二百十日」俳句大会
(2020年8月28日 於阿蘇)
〈秀逸〉
水羊羹の纏ふ明かりを戴きぬ 西村 楊子
〈佳作〉
腹這の猫の親子の端居して 徳山 直子
〈熊本県現代俳句賞〉(加藤知子選)
噴煙を己が纏ひて阿蘇良夜 田代 幸子
☆ 第五七回 現代俳句 全国大会
2020年10月25日 参加4名
夏薊人を吸い込む献血車 荒尾かのこ
フライパンの丸へ四角へ夏来る 徳山 直子
黄水仙挿せば茶室の子宮めく 西村 楊子
電波塔新芽と競い林立す 右田 捷明
《『 現代俳句 』 列島春秋 掲載句》
(2020年)
三月 肥後椿初陣前の咳払い 丘 菜月
四月 さくらさくら指の先までさくらの香
佐藤恵美子
五月 鳥交るこゑしてしづか五高の森
光永 忠夫
六月 竜神の泉の水をひとすすり
田川ひろ子
七月 ユダの子を産み継ぐ村の夏の霧
西口裕美子
八月 裏阿蘇の一町二村 水の秋
星永 文夫
九月 枯れはじめている野原聴く野原
柏原喜久恵
十月 遠祖の蹴りたる湖や大花野
真弓ぼたん
十一月 てつがくのごろごろごろと零余子飯
西村 楊子
十二月 神風連とうもっこす親爺の早生蜜柑
伊藤 幸
(2021年)
一月 寒林に火の国風土記の瘤がある
星永 文夫
《2-2に続く》
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