現代俳句くまもと 第20号
詩趣湧く時は 熊本県現代俳句協会会長
加藤 知子
梅の花ともにながめて子等遠く 中澤 潮花
梅の花は桃の花ほど華やかではなく、桜の花ほど派手でもない。しかし、馥郁とした香りは何にも勝る。そしてそれ故か、ほんのり故郷を思わせる。そんな梅の木のかたわらで、子等と一緒に眺めた過日のことを思い出しては、ふたたび子等と共に眺めたいと切望しているのだろう。作者がハンセン病患者として隔離されている身の上であれば、なおのこと。
掲句は、熊本市の黒髪にあった回春病院に収容されていたハンセン病患者さんたちの句集『日時計』(立田俳壇発行、近澤豊榮編集)に収録された本名・近澤豊榮の句の一つである。同句集は、ハンナ・リデル没3年後の昭和9年に、霊前に捧げられた。
句集名は、リデルが大正13年に回春病院内の教会前庭に、日時計を設置したことに拠る。
リデルの思いは、「ハンセン病のために社会と絶縁せねばならなかった患者たちが、ほがらかに太陽のもとで共に活き、温かい光に思う存分ぬくもり、落日の後は父なる神の懐に息わせたい」、「日時計の役に立たない曇りや雨の暗い冷たい日は取り除きたい」と。さらにリデルは、「感興至る時詩趣湧然として来り、短歌となり、詩となり俳句となる」と述べる(リーフレットより)。
不遇にあればあるほど、感性も研ぎ澄まされて、短詩型の俳句や短歌にこころの拠り所を向かわせようとするだろう。
『つぐみ』2022年2月号において、外山一機氏は、「ハンセン病患者にとって俳号をつけるということは、人間としての尊厳を取り戻そうとすることではなかったか」と言及している。俳号とは、人間性に他ならないということだろうか。
*ハンナ・リデルは、英国生まれの宣教師で、1895年、熊本に初めてハンセン病病院である回春病院を設立した。同病院は1941年閉鎖。
*現在のリデル、ライト両女史記念館は、1919年に同所に設立されたハンセン病研究所の建物を活用している。
2022年度新体制のスタート
会 長: 加藤 知子
事務局長・副会長・会計幹事:西田 和平
幹 事: 吉良 香織
顧 問: 丘 菜月
昨年度の活動報告は随時会報にて報告。
今年度の活動計画としては、会報の発行と紙上句会開催、他は未定。
2021年度会計報告書を同封しています。
ご意見等のある方は、事務局にご連絡ください。
紙上句会(勉強会)開催報告
第1回 2021年 3月 15名参加
第2回 2021年 7月 16名
青島玄武、荒尾かのこ、生田一代、 丘菜月、柏原喜久恵、 加藤知子、吉良香織、榮田しのぶ、徳山直子、中山宙虫、
西田和平、西村楊子、林紀子、真弓ぼたん、右田捷明、
宮中康雄
第3回 2022年 3月 15名
生田一代、丘菜月、加藤知子、吉良香織、徳山直子、
中山宙虫、西口裕美子、西田和平、西村楊子、萩瑞枝、
林紀子、真弓ぼたん、右田捷明、宮中康雄、若松節子
今後の紙上句会開催の際は、
もっと多くの方のご参加をお待ちします。
*お時間のある方は、
ハンナ・リデル没後90年記念事業としての特別企画展にお出かけください。
場所:リデル、ライト両女史記念館
熊本市中央区黒髪5丁目23の1
・『ハンセン病文学全集 9 俳句・川柳』
(皓星社、2010年発行、4800円+税)に
『日時計』が収録されているようです。
<<お知らせ>>
〇現代俳句年鑑にご参加をお願いします。
参加費3千円で5句掲載。締切は5月31日。
〇第59回現代俳句全国大会イン北九州
4月号巻末に投句用紙と投句料の振込用紙が綴じ込まれています。
締切は8月1日必着。
多くの投句参加を期待しています。
〇本年度(2022年1月から2022年12月)の
現代俳句協会会費の納入はお済みですか。
熊本県現代俳句協会 会報 第20号
2022(令和4)年5月1日 発行
発行人 会 長 加藤 知子
編集人 事務局長 西田 和平
メールkumamoto_gendaihaiku@yahoo.co.jp
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今号は、会計決算報告書をお届けするのが主で
会員さんの俳句大会等での成績などは
なくて載せられませんでした。
何か載せられる入賞句などあったら
お知らせください。
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