フランス語読解教室 II

 多様なフランス語の文章を通して、フランス語を読む楽しさを味わってみて下さい。

Au bar des nostalgies (2) 沖縄、嘉手納のバーで

2010年03月03日 | Weblog
 [注釈]

 * l'histoire des bases ame'ricaine au Japon par l'autre bout de la lorgnette. : 前回扱った l'histoire minimaliste...とほぼ同じ内容を表していると考えられます。なお regarder quelque chose par le petit bout de la lorgnette 「視野が狭い」という表現もあります。
 * Des amours parfois heureux, souvent impossibles.. : rencontres entre un soldat et une fille 、時には実を結んだり、あるいは悲恋に終わった、さまざまな出会いのことです。
 * D'autres e'taient porteuses... : もちろん d'autres lettres のことです。
 * Touche' par ces sentiments … : Moze さんの「ほだされて」という訳には感心させられました。
 * et revenu dans l'actualite' avec... : revenu は、Un hameau de pe^cheurs を説明しています。また l'actualite' とは、「時事、話題」を意味します。

 [ 試訳]
 
 代書屋は、日本の米軍基地の歴史を、また別の小さなエピソードとしても物語っている。彼らの存在は、ひとりの兵士と、バーで務めていたり、そうでない場合もあるが、ひとりの娘との出会いの記憶でもある。時には幸せな恋もあったが、多くは捨てられたり、相手が姿を消したりして、実らなかった恋だ。ヴェトナム戦争が続いていたある日、ひとりの娘が、差出人に見覚えがないという一通の手紙を持って、仲間テツオを尋ねて来た。それは、息子の戦死を彼女に伝える父からの手紙であった。父親は息子の遺品の中に娘の名前を見つけたのであったろう。娘はなにも言わず、涙を流しながら出て行った。手紙が幸福の風をもたらすこともあった。「まだぼくのことを愛してくれていますか?」自分がメッセンジャーにも相談相手にもなったこうした恋の数々にうたれて、身体が丈夫な限り、仲間テツオは恋文を書き続けて来た。
 「私たち、女の子がだいたいの気持ちを伝えると、仲間さんがそれを文章にしてくれた」と、お世話になった代書屋のことを思い出しながら、スズヨは言った。小柄ながらもスマートで、日焼けした顔に髪を束ねていたスズヨは、辺野古の小さな港で40年間バーを営んでいた。辺野古は沖縄本島の東岸、キャンプ・シュワブの下側に位置する。50年代に40軒ほどの米兵相手のバーができ、暮らしぶりがすっかり変わった漁師町辺野古は、入り江に新たに米軍基地を作る計画が持ち上がり、今また話題を集めている。
 スズヨの Tシャツには「あなたなしの人生など考えられない」と英語で綴られている。彼女の知っているのは片言の英語だ。「どうやって兵隊たちと話していたのですか ?」頭を傾けて、女盛りをすぎた彼女はいたずらっぽく笑った。「男と女だもの、どうしたって分かりあえるでしょう。そうじゃない ?」と答えた。
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 大地震によりハイチが被った傷がまったく癒えないままに、今度はチリでまた大地がうねりました。フランスでは週明けに嵐によって海がいきり立ち、とくに大西洋側で大きな被害がもたらされました。50人以上の方が亡くなっています。
 自制を促されているのは、私たち人類の方で、「地球を守る」という言い方は、自然に対して随分と奢った物言いなのかも知れません。
 それでは、次回は Au bar...を最後まで読んでしまいましょう。
 smarcel