[注釈]
* Le de'rangeant message... : このタイトルですが、適訳を見つけることは、なかなかに難しそうですね。これは、全文を検討してから考えることにしましょう。
* en faveur d'un de'sarment nucle'aire mondial : この de'sarment ですが、場合に応じて limiter les armements か、あるいは supprimer les armements なのかを考える必要があります。この記事では、後に abolition totale という表現もみられますから、ここでは「軍縮」とするのが適当ではないでしょうか。
* Ce geste fait suite a' la de'claration... : geste には具体的な身体の動きを指す場合と、une action remarquable を表現する場合があります。ここでは、後者、文中の言葉で言えば la pre'sence (...) aux ce're'monies を指しています。また、Mais il ne re'pond que partiellement... の il は、この geste を受けています。
* le re'alisme tempe're' d'aspirations au de'sarmement... : ここは、先ほど述べたように、 une abolition との対比を考えなければなりません。「核兵器の削減を希求する微温的なレアリスム」に対して、被爆者たちが望んでいるのは、核兵器の「全廃」です。
* le recours a` la bombe e'tait inutile. : この inutile は、広島・長崎への原爆投下はIndispensablesであったのか、という問いに対するひとつの答えとなっていることを踏まえて下さい。
[試訳]
今年初めて、国連事務総長をはじめ、アメリカ駐日大使ならびに英仏の代理大使が、1945年8月6日広島に原子爆弾が投下されたことを記念する式典に参列したことは、象徴的に大きな意味を持った。それは、世界的な核軍縮に向けての運動の盛り上がりを示している。
これは、2009年4月にプラハでオバマ大統領が「核のない世界の構築」を呼びかけた宣言につづく動きであり、また同宣言は、その数ヶ月後の安全保障理事会の決議によってさらに確かなものとなった。しかしながら、こうした働きかけも、広島の、さらにはその3日後に被爆した長崎の犠牲者たちの期待には、部分的に応えるものでしかない。被爆者54万人のうちの生存者22万人の望んでいるのは、核軍縮に向けての微温的なレアリスム以上のものだ。つまり、彼らは、人を殺めるという狂気を増幅させて来た核兵器の全廃を訴えているのだ。
ジョン・ルース、アメリカ駐日大使が広島にやって来たのは、被爆者たちのために祈るためではなく、「第二次世界大戦のすべての犠牲者を哀悼するため」だった。アメリカは原爆投下に対して謝罪を表明したことはない。それは戦争を早く終わらせるために「必要」だった考えられているからだ。「やむをえなかった」のだろうか。1945年8月日本帝国軍は打ち負かされ、海軍・空軍ともに壊滅していた。合衆国大統領であったドワイト・アイゼンハワー将軍は、その回想録の中でこう述べている。「原爆の使用は不要であった」と。…………………………………………………………………………………………………………………….
今週になって秋のかすかな予感をようやく実感できるようになりましたが、まだまだ暑い中「コメント」ありがとうございました。
8月は、みなさんもご存知のように、日本では「戦争」についての言葉がにわかに増幅する時期にあたります。そういえば、ぼくも昨年の8月、加藤陽子『それでも、日本は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)を読んでいました。もちろん、核兵器をめぐる言葉もこの時期そこらここらで見かけることになります。ただ、米・露・中に並ぶ「核大国」であるフランスの新聞が社説で、8月6日に「ヒロシマ」に言及したことは、ぼくの知るかぎり、初めてだったと思います。
これもそんな「8月言説」のひとつですが、朝日新聞の特集記事「私たちの戦争・2010年夏」の3回目に映画監督の森達也さんが寄せた文章が、印象深く記憶に残りました。その一部をここに引用しておきます。
- 戦場では「殺される」との恐怖が心を壊す。まして「殺す」ときの心理的負荷はすさまじい。だから加害の記憶が残らない。語りたくても語れない。なぜあれほど残虐なことができたのか、そのときの情動を思い出せない。-
日本の「8月言説」が被害の記憶のみに偏っていないか、そのことが毎年気にかかります。
それでは、次回は29日に、論説記事の残りの部分の試訳をお目にかけることにします。
shuhei
* Le de'rangeant message... : このタイトルですが、適訳を見つけることは、なかなかに難しそうですね。これは、全文を検討してから考えることにしましょう。
* en faveur d'un de'sarment nucle'aire mondial : この de'sarment ですが、場合に応じて limiter les armements か、あるいは supprimer les armements なのかを考える必要があります。この記事では、後に abolition totale という表現もみられますから、ここでは「軍縮」とするのが適当ではないでしょうか。
* Ce geste fait suite a' la de'claration... : geste には具体的な身体の動きを指す場合と、une action remarquable を表現する場合があります。ここでは、後者、文中の言葉で言えば la pre'sence (...) aux ce're'monies を指しています。また、Mais il ne re'pond que partiellement... の il は、この geste を受けています。
* le re'alisme tempe're' d'aspirations au de'sarmement... : ここは、先ほど述べたように、 une abolition との対比を考えなければなりません。「核兵器の削減を希求する微温的なレアリスム」に対して、被爆者たちが望んでいるのは、核兵器の「全廃」です。
* le recours a` la bombe e'tait inutile. : この inutile は、広島・長崎への原爆投下はIndispensablesであったのか、という問いに対するひとつの答えとなっていることを踏まえて下さい。
[試訳]
今年初めて、国連事務総長をはじめ、アメリカ駐日大使ならびに英仏の代理大使が、1945年8月6日広島に原子爆弾が投下されたことを記念する式典に参列したことは、象徴的に大きな意味を持った。それは、世界的な核軍縮に向けての運動の盛り上がりを示している。
これは、2009年4月にプラハでオバマ大統領が「核のない世界の構築」を呼びかけた宣言につづく動きであり、また同宣言は、その数ヶ月後の安全保障理事会の決議によってさらに確かなものとなった。しかしながら、こうした働きかけも、広島の、さらにはその3日後に被爆した長崎の犠牲者たちの期待には、部分的に応えるものでしかない。被爆者54万人のうちの生存者22万人の望んでいるのは、核軍縮に向けての微温的なレアリスム以上のものだ。つまり、彼らは、人を殺めるという狂気を増幅させて来た核兵器の全廃を訴えているのだ。
ジョン・ルース、アメリカ駐日大使が広島にやって来たのは、被爆者たちのために祈るためではなく、「第二次世界大戦のすべての犠牲者を哀悼するため」だった。アメリカは原爆投下に対して謝罪を表明したことはない。それは戦争を早く終わらせるために「必要」だった考えられているからだ。「やむをえなかった」のだろうか。1945年8月日本帝国軍は打ち負かされ、海軍・空軍ともに壊滅していた。合衆国大統領であったドワイト・アイゼンハワー将軍は、その回想録の中でこう述べている。「原爆の使用は不要であった」と。…………………………………………………………………………………………………………………….
今週になって秋のかすかな予感をようやく実感できるようになりましたが、まだまだ暑い中「コメント」ありがとうございました。
8月は、みなさんもご存知のように、日本では「戦争」についての言葉がにわかに増幅する時期にあたります。そういえば、ぼくも昨年の8月、加藤陽子『それでも、日本は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)を読んでいました。もちろん、核兵器をめぐる言葉もこの時期そこらここらで見かけることになります。ただ、米・露・中に並ぶ「核大国」であるフランスの新聞が社説で、8月6日に「ヒロシマ」に言及したことは、ぼくの知るかぎり、初めてだったと思います。
これもそんな「8月言説」のひとつですが、朝日新聞の特集記事「私たちの戦争・2010年夏」の3回目に映画監督の森達也さんが寄せた文章が、印象深く記憶に残りました。その一部をここに引用しておきます。
- 戦場では「殺される」との恐怖が心を壊す。まして「殺す」ときの心理的負荷はすさまじい。だから加害の記憶が残らない。語りたくても語れない。なぜあれほど残虐なことができたのか、そのときの情動を思い出せない。-
日本の「8月言説」が被害の記憶のみに偏っていないか、そのことが毎年気にかかります。
それでは、次回は29日に、論説記事の残りの部分の試訳をお目にかけることにします。
shuhei