フランス語読解教室 II

 多様なフランス語の文章を通して、フランス語を読む楽しさを味わってみて下さい。

ロジェ-ポール・ドロワ『暮らしの中の哲学 101の実験』(1) Lecon 219

2010年10月13日 | Weblog
 [注釈]

* mal pose’, mal place’e, de’cale’e, inattendue. : de’cale’e の訳には少し苦労されたのではないでしょうか。calerは、 家具などを固定させるために、なにかを「かませる」ことですね。その「かまし」をはずすことが、de’caler です。ですから、Moze さんの「しっくりこない」、manon さんの「ズレがある」などは、なかなか工夫された訳語だと思います。
* Vous vous connaissez << du dedans>>. Vous vous percevez comme << du dehors >>>. : connaitre / percevoir の違いを理解しておく必要があります。 percevoir には、parvenir a` connaitre, a` distinguer qch. malgre’ la difficulte’. といった意味合いがあります。ですから、普段は、「内側から」自分のことは分かっていたのが、録音機器を使って突然「外側から」自分の声を聞かされたことを表現しています。
* du dehors comme du dedans : たまに「外側から」自分の声を耳にする私たちとは違って、プロは、常に「内/外」から同時に自分たちの声を聞いている。
* avec et dans cette matie`r e : 先ほどとほぼ同じことをこう表現しています。つまり、ここでいう matie`re とは、声のことです。
* telle que les autres l’entendent. : tel que...「…のとおりに、…のままに」

 [試訳]

実験時間 数分
用意すべきもの 自分の声が聞ける録音機
効果 

 必ず意外に思う。「これが私の声 ?」確かにあなたの声なのに、甲高過ぎるように、あるいは低過ぎるように思えたり、またはおっとりしすぎていたり、早口にすぎたり、据わりが悪かったり、ぎこちなかったり、思いがけない聞こえ方をする。はじめ、それが自分の声の響きだとも、口調だともわからない。けれども、他人の声なら録音機は正確に再現している。あなたの声に限ってそうではない。
 これらの言葉も文章も、口にしているのは確かにあなただ。それに、迷わず自分の声だということは分かる。でも斜めからというか、横からといったらいいのか、おもしろい角度からとらえられたように聞こえる。それはあなたの声であって、あなたの声ではない。あなたは突然口を開けた裂け目に、隙間に落っこちる。「内側から」は自分のことと分かっていても、まるで「外側から」自分のことをとらえたようだ。プロであればこうしたことには慣れている。ラジオや制作関係者は、自分の声を外からでも、内からでもそれとわかる。彼らは声とともに、声のなかで働いている。つねに自分の声に耳を傾けている彼らは、他人が聴いているままの自分の声を初めて聞かされて普通は感じる、驚きや居心地の悪さをもう経験することもない。
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 明子さん、Moze さん、雅代さん、ウィルさん、manon さん、shoko さん、訳文ありがとうございました。今回扱っているのは、かなり平易な文章なのですが、それでも、みなさんの訳文を参考にしてはじめて、立ち止まって考えるべきところがいくつかあることに気づかされました。「試訳」を読まれて疑問に思うところがあれば、またコメント下さい。
 de'placant は、全体を訳出した後、あらためて相応しい訳を考えたいと思います。
 それでは、次回は、残り少ないですが、最後まで読んでしまいましょう。27日(水)に「注釈・試訳」をお目にかけます。