フランス語読解教室 II

 多様なフランス語の文章を通して、フランス語を読む楽しさを味わってみて下さい。

「それでもフランス人は本を読んでいる。」(1)

2014年04月16日 | Weblog

[注釈]
 

 今回はやはりみんさんには易しかったようで、ぼくからとくに付け加えることはありません。フランス語で書かれた新聞などを容易く読める時代になりました。ぼくの目に留った記事を@hiokiとして、ときどきツィートしています。みなさんぐらいフランス語を正確に読めれば、いろんな記事が楽しめるでしょうから、どうかまた参考になさって下さい。
 ひとつだけいえば、parisienne et diplo^me'e の箇所の diplo^me'eですが、これは一般的には、大学や、大学院、あるいはグラン・ゼコールといった高等教育機関を修了したもののことを言います。日本と違って、フランスの大学の卒業認定はなかなか厳格で、そこで修了に至らなかったもの、sans diplo^me' の若者の就労も大きな社会問題となっています。

[試訳]
 

 34回目になる、パリで開催されているサロン・デュ・リーブル(本の見本市)の通路で、きっと彼女を見かけるのではないだろうか。46歳、おそらく学歴のある、パリ在住の女性で、手のかかる子供はいない。3月14日金曜に公表されたイプソ・リーブル・エブド(週間書籍情報)による調査から浮かび上がるのは、彼女のような典型例である。つまり、本好きの女性である。
 彼女のような平均的読書家は年に十五冊ほどの本を読むという。二年前に比べると一冊減らした格好だが、最近の研究はほっとさせられる結果を示している。
 確かに書籍市場は収縮し、売り上げもここ三年で4%の落ち込みを示しているが、それでもフランス人は本を読み続けている。15歳から24歳までの若者の80%が最近一年で一冊は本を読んでいて、すべての年代で見ると、70%という数字になる。
 予想に反して、本は負けていない。読書は、「友人との外出」に次いで、人気の余暇として、音楽やテレビ視聴よりも上位の位置を占め続けている。
 本を読む人たちの約半数が、毎日必ず本を手にすると答えている。その多くは刑事物やスパイ小説で、今年は際立って売り上げを伸ばしているジャンルだ。
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 misayoさん、Mozeさん、shokoさん、それぞれ正確な訳文ありがとうございました。また何度目かの新学年。本年度もどうぞよろしくお願いします。
 それにしても、misayoさんの読書量には驚きました。de'vorer という表現が文中ありましたが、それはもうGourmandeの域ですね。
 高校の先生の「現実」を見なさい、というお言葉ですが、良質の書物の中にこそ「現実」が真にリアルな姿を現すということもあります。ぼくは今、古井由吉『反自叙伝』(河出書房新書)を読んでいますが、東京大空襲から2011年3.11.にまで至る日本社会の移り行きを、ひとりの作家の達意の文章によって、戦争を知らないぼくのような人間の体感をもって生きることが出来きます。それも、どこか真実に触れているという恍惚感を持って。本を読むということの功徳のひとつだと言えば、きっと古井さんは苦笑なさるでしょうけれども。
 さて次回は、少し長くなりますが、この文章を最後まで読み切ってしまいましょう。30日(水)に試訳をお目にかけます。Bonne lecture !  Shuhei