人間はコスモロジー――現代思想の用語でいえば「大きな物語」――なしには安心して生き死にすることが困難な生き物です。
しかし、現代ではあまりにも多様な学問の分野があり、様々な思想があって、統一的なコスモロジーを描くこともまた非常に困難になっています。
そうしたなかで、自然科学、人文科学、社会科学の驚くほど広範な知識を総合して、現代人が共有できる大きな物語を描きだすことを試みたのが、ケン・ウィルバーの『進化の構造』(松永太郎訳、春秋社、全2巻、品切れ中)です。
筆者は、盲信的なウィルバー主義者ではありませんし、若干の批判はありますが、『意識のスペクトル』(吉福伸逸物他訳、春秋社、全2巻)以来ずっと、ウィルバーの仕事から大きな恩恵を受けてきましたし、『進化の構造』で語られていることの基本線については合意しています。
したがって、授業で学生のみなさんに伝えることの思想的バックグラウンドのかなりの部分でもあります。
もう1つのテキストである拙著『コスモス・セラピー――生きる自信の心理学』(サングラハ教育・心理研究所)には、『進化の構造』の入門編という面もあるくらいです。
授業が進むにつれて、あるいはすでにブログ授業で学んでいて、この方向性でさらに深く探究したいと思ったみなさんには、ぜひ読んでほしいのですが、あまりにも分厚いことと、はなはだ残念なことに現在品切れ中であることの2つの理由で、ダイジェスト版であり、より読みやすい会話体で書かれた『万物の歴史』(大野純一訳、春秋社)から取りかかることをお薦めします。
きっと目の前が開けるような、進化の歴史に対する展望が見えてくるでしょう。
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