続けて小出裕章氏の文章を引用していきます。小出氏の文章は専門用語ばかりなので、素人にはやや読みにくいのですが、しっかりと読んでいくと、放射能はたとえわずかでも危険だということが伝わってきます。
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国際放射線防護委員会(ICRP)は「生体防御機能は、低線量においてさえ、完全には効果的でないようなので、線量反応関係にしきい値を生じることはありそうにない」と述べ、放射線の被曝はそれが低線量であっても影響があることを認めています。
ただし、そのICRPも実は「直線、しきい値なし」仮説を使っていません。ICRPは、低線量での被曝影響には線量・線量率効果係数(DDREF)と呼ぶ係数を導入して、影響を半分に値切っているのです。
ところが、人間の被曝についてもっとも充実したデータを提供してきた広島・長崎の原爆被爆者データは……むしろ低線量になるにしたがって単位線量あたりの被曝の危険度が高くなる傾向を示しています。
保健物理学の父と呼ばれ、ICRP委員などを歴任したK・Z・モーガンさんが、「非常に低線量の被曝では高線量での被曝に比べて一レムあたりのガン発生率が高くなることを示す信頼性のある証拠すらあり、それは超直線仮説と呼ばれる」と述べているのも、そうした証拠を踏まえているからです。
そして、特に最近の科学の進歩によってバイスタンダー効果(被曝した細胞から隣接している細胞に被曝情報が伝えられること)、遺伝子(ゲノム)不安定性と呼ばれる継世代影響などの生物影響が発見され、低線量での被曝は高線量での被曝に比べて、単位線量あたりの危険度がむしろ高いというデータが、分子生物学的にも裏づけられてきました。
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小出氏の文章は学術的権威のある(と思われる)情報源からの報告やデータに基づいており、そういう意味で信頼性は高いと考えてよさそうです。
まず、国際放射線防護委員会」は、若干値切ってはいるけれども、放射能は「低線量だから(まったく)心配ない」とは言えないことを認めているわけです(しかし今日もまた日本の報道では「健康に影響のある量ではない」といったセリフを聞きました)。
ところが、より強く危険を警告する説では、「むしろ低線量になるにしたがって単位線量あたりの被曝の危険度が高くなる傾向を示しています」とのことです。
「直線・しきい値なし」仮説でさえきわめて怖いと思いますが、もしこちらのほうが正しいとしたらもっと怖い話です。
これは、説の出所からしても無視できるようなものではありませんし、予防原則から言えばまずこうしたもっとも強く危険を警告している説から検討すべきですし、一般市民に知らせるべきではないでしょうか。
さらに、細胞と細胞の間や遺伝子についても、「低線量での被曝は高線量での被曝に比べて、単位線量あたりの危険度がむしろ高いというデータ」があると小出氏は言っています(これについては注に説の出所が書かれていないのが残念です)。
放射能の影響が直接被曝した本人にとどまらず、遺伝子不安定性というかたちで後の世代にまで及ぶというのが本当だとしたら(素人目にもありうることだと推測できます)、これは絶望的なほどの危険ではないでしょうか(遺伝子の自己修復能力ができるだけ大きいことを祈るしかありません)。
最初に返ると、私たちの体の中で、ほんの数電子ボルトのエネルギーでつながっていのちを維持している分子同士の間に、数百万~数千万電子ボルトのエネルギーを持った放射能が飛び込んできてつながりを切ってしまうのですから、危険がないわけはない、たとえ微量でも、と私には思えてなりません。
原発を推進してきた(まだ推進しようとしている)政治家や経済人や学者の諸氏は、こうした放射能についての諸説を高い危険度を指摘するものから順に――つごうのいい「だいじょうぶ」を先に鵜呑みにして「きわめて危ない」を付け足しに「聞き置く」のではなく――ちゃんとご存知なのでしょうか。
もし知らなくて推進しているのなら、それはあまりに危険であまりに無責任です。
頭で知っていてしかし危険の実感・危機感がないとしたら、それは致命的な危機不感症・感性が壊れているのではないか、と私には思えます。
危機認識と危機感が欠如しているリーダーに、国民の安全・安心を任せることはできません。
ぜひとも一日も早く危機認識と危機感をしっかりもっていただくか、さもなければ引退―交代していただきたい、と強く希望します。
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