昨日に続き、第三願から第六願までを掲載します。
第一願から第六願までは、六波羅蜜それぞれの実践が、単に個人の覚りのことだけでなく、一切衆生に関わることであるということを明らかにしています。
というか、大乗の菩薩の目指す覚り・阿耨多羅三藐三菩提・この上なく比較するもののない覚りは、そもそも個人的なものではありえない、ということを明快に語っているのです。
〔第三願〕
また次にスブーティよ、菩薩摩訶薩が忍辱波羅蜜を実践する時、諸々の衆生が互いに憎みあい、怒鳴りあい、刀や棒や瓦や石でお互いに傷つけあい殺しあうのを見たならば、菩薩摩訶薩はまさにこのような願を立てるべきである。私はこの時・所で忍辱波羅蜜を実行し、私が仏になった時には、私の国土の衆生にこのようなことがないようにし、お互いを見るのが父のよう、母のよう、兄のよう、弟のよう、姉妹のようにし、よい友のようにみなに慈しみを実践させようと。スブーティよ、菩薩摩訶薩は、こうした行をなすことで忍辱波羅蜜を完成し、この上ない覚りに近づくことができるのである。
復 次に須菩提、菩薩摩訶薩は羼提波羅蜜を行ずる時、諸の衆生互に相瞋恚し罵詈し、刀杖瓦石もて共に相殘害し奪命するを見て、當に是の願を作すべし。我れ爾所の時に隨ひ羼提波羅蜜を行じ、我れ佛を得る時、我が國土の衆生をして是の如き事無からしめんと。相視ること父の如く母の如く兄の如く弟の如く姊妹の如く、善知識の如く、皆慈悲を行ぜしめんと。須菩提、菩薩摩訶薩は是の如きの行を作して能く尸羅波羅蜜を具足し阿耨多羅三藐三菩提に近づく。
〔第四願〕
また次にスブーティよ、菩薩摩訶薩が精進波羅蜜を実践する時、衆生が怠惰で精進せず、三乗、すなわち声聞乗・独覚乗・仏乗を捨て去るのを見たならば、菩薩摩訶薩はまさにこのような願を立てるべきである。私はこの時・所で精進波羅蜜を実行し、私がこの上ない覚りを得た時には、私の国土の衆生にこのようなことがなく、一切の衆生が熱心に修行し精進し、三乗の道でそれぞれ覚りの向こう岸へ渡ることができるようにしようと。スブーティよ、菩薩摩訶薩は、こうした行をなすことで忍辱波羅蜜を完成し、この上ない覚りに近づくことができるのである。
復次に須菩提、菩薩摩訶薩は毘梨耶波羅蜜を行ずる時、衆生の懈怠して勤精進ならず、三乘・聲聞・辟支佛・佛乘を棄捨するを見て、當に是の願を作すべし。我れ爾所の時に隨ひ毘梨耶波羅蜜を行じ、我れ阿耨多羅三藐三菩提を得る時、我が國土の衆生をして是の如きの事無く、一切衆生勤修し精進し、三乘道に於て各度脱することを得しめんと。須菩提、菩薩摩訶薩は是の如きの行を作して能く毘梨耶波羅蜜を具足し、阿耨多羅三藐三菩提に近づく。
〔第五願〕
また次にスブーティよ、菩薩摩訶薩が禅定波羅蜜を実践する時、衆生が五つの障害に覆われ、淫欲、怒り、眠気、後悔、疑いのために、初禅から第四禅に入ることができず、虚空処、識処、無所有処、非有想非無想処に入ることができないのを見たならば、まさにこのような願を立てるべきである。私はこの時・所で禅定波羅蜜を実行し、私がこの上ない覚りを得た時には、私の国土の衆生にこのようなことがないようにしようと。スブーティよ、菩薩摩訶薩は、こうした行をなすことで禅定波羅蜜を完成し、この上ない覚りに近づくことができるのである。
復次に須菩提、菩薩摩訶薩禪那波羅蜜を行ずる時、衆生の五蓋に覆われ、婬欲、瞋恚、睡眠、掉悔、疑の爲に、初禪乃至第四禪を失ひ、慈悲喜捨、虚空處、識處、無所有處、非有想非無想處を失へるを見て、當に是の願を作すべし。我れ爾所の時に隨ひ禪那波羅蜜を行じ、我れ阿耨多羅三藐三菩提を得る時、我が國土の衆生をして是の如きの事無からしめんと。須菩提、菩薩摩訶薩是の如き行を作して、能く禪那波羅蜜を具足し、阿耨多羅三藐三菩提に近づく。
〔第六願〕
また次にスブーティよ、菩薩摩訶薩が般若波羅蜜を実践する時、衆生が愚かで社会常識的および超越的な正しい考えを見失い、あるいはカルマもなくカルマの因縁もないと説き、あるいは実体的霊魂の永続性を説き、あるいは死んだらすべては終わりだと説き、あるいは〔単なる〕空無を説くのを見たならば、まさにこのような願を立てるべきである。私はこの時・所で般若波羅蜜を実行し、仏の国土を浄化し衆生を成熟させ、私の国土の衆生にこのようなことがないようにしようと。スブーティよ、菩薩摩訶薩は、こうした行をなすことで般若波羅蜜を完成し、速やか一切を知る智慧に近づくことができるのである。
復次に須菩提、菩薩摩訶薩般若波羅蜜を行ずる時、衆生の愚癡にして世間・出世間の正見を失ひ、或は業無く業因縁無きを説き、或は神常を説き、或は斷滅を説き、或は無所有を説くを見て、當に是の願を作すべし。我れ爾所の時に隨ひ般若波羅蜜を行じ、佛國土を淨め衆生を成就し、我が國土の衆生をして是の如きの事なからしめんと。須菩提、菩薩摩訶薩是の如き行を作して、能く般若波羅蜜を具足し、疾に一切種智に近づく。
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