137億年前、宇宙は、限りなく小さい状態から爆発的に拡大しはじめたといわれています。
限りなく小さいとは、どのくらい小さいのでしょう?
その後、他の研究者によって、始まってまさに直後、10のマイナス44乗(つまり1の後に0が44個付いた数分の1)秒というきわめて短い時間がたった時、宇宙は、ごくごく小さな1つのエネルギーの球だったというところまで推測が進められました。
(「球」というのは1種の比喩で、専門的には数式でしか表現できない世界なのだそうですが。)
どのくらい小さいかというと、10のマイナス34乗センチメートルです。
これは、ミクロンやナノといった単位よりもはるかに小さく、もちろん目に見えるような大きさではありません。
それどころか、原子や素粒子やクォークよりも小さいのです。
その大きさというか小ささというかの中に、現在の観測可能な範囲の宇宙がすべて凝縮されていた、というのです。
もう、信じられないような話ですが、ここで終わりではありません。
さらに、その時点では、すべてが凝縮されすぎていて、特定の物質も時間も空間も存在することはできなかったはずだ、と考えられています。
物質も時間も空間も存在できないとしたら、それは何だったのでしょうか?
それは、エネルギーだったというのです。
物質も時間も空間もなく、すべてはエネルギーだけなんて、常識ではまったく信じることも想像することもできませんが、でも、アインシュタイン以降のノーベル賞クラスの物理学者たちが考える、現代科学の標準的な仮説ではそうなっています。
(ビッグバン仮説の主な証拠は、①銀河の拡散、②宇宙空間の絶対温度、③宇宙背景放射、④夜空の闇、など。詳しいことは他の宇宙論の入門書を参照してください。)
ところで、私たちにとって決定的に重要なのは、この仮説が正しいとすると、宇宙の初めには、すべてが「ばらばらのモノ」の寄せ集めではなく、たった「1つのエネルギー」だった、つまり「すべてが1つ」だったことになる、といういうことです。
そしてそれだけでなく、拡大してばらばらになったわけではなく、いくら拡大しても、エネルギー・レベルでは宇宙は1つのままだ、ということです。
わかりやすくするために、ここにものすごく小さな風船があると想像してください。
それに空気をたくさん吹き込んで、最初の小ささからは信じられないくらい大きくふくらませるとします。
さて、そこで、びっくりするほど大きくなった風船は、いくつになったのでしょうか?
一瞬、「え?」と思われるかもしれませんが、シンプルに答えてみてください。
そうですね、いくらふくらんで大きくなっても、1つの風船は1つのままです。
それとまったく同じで、137億年もかけてもう驚異というほかないほど大きくなっていますが、でも、「宇宙は、始まってから今までずっと1つのままだ」と考えられるのです。
このことは、私たちの宇宙観・人生観つまりコスモロジーにとって、決定的に重要な意味があります。
つまり、神話やあるいは神秘主義的宗教や覚りの話ではなく、現代科学でも、まちがいなく「私たちと宇宙は1体だ」といえることになるからです。
「突然、そんなことをいわれてもー…あやしいー…」という気のする方がいると思いますが、よかったら、続けて授業に参加してください。
たぶん、あなたの世界観が変わると思います。つまり、近代科学的世界観から現代科学的世界観に、大きく転換していくでしょう。
そしてそれは、たぶんすごくいいことです。
*写真は、「ビッグバン」仮説の提唱者ジョージ・ガモフ(1904-1968)、池内了『宇宙論のすべて』新書館より転載
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不思議で不思議でなりません。
「不思議」とは、思いも議論もできないという言葉。
でも、とことんまで思って議論してしまう、科学者・人間って凄いな~とも思ってしまいます。
今後の展開も楽しみです。
たまたま他の方のブログ経由で教育ブログのランキングを見てたどりつきました。
これから過去ログを少しずつ拝読させていただきます。
いやあ、ほんとに宇宙は不思議、それを探究しつづける科学者たちって、もう感心・感嘆!ですね。
>マイマイさん
エネルギーのもっとも典型的なかたちが光なので、始めに宇宙は光そのものだった、といってもいいそうです(佐治晴夫先生による)。したがって、私たちは究極のところ「光の子」ということにもなるようです。たとえ、今気分は暗く落ち込んでいても、事実はそうなんですね。
>rabbitfootさん
「隠れファン」のカミングアウトですね。歓迎です! ぜひ、過去のブログ読んで、よかったらまたコメントください。