原発事故に対するテレビと新聞の姿勢。
民放が「原発推進」の専門家ばかり番組に呼ぶのは、東電及びその他の電力会社からの多額の広告費を得ているから、というのはわかった。
ならばその経営を視聴者の受信料によって成立させているNHKが「民放」に右ならえで、同じような御用学者にしか意見を聞かない態度は実に腹立たしい。
受信料を払っているみなさまに正確で、公正な情報を伝えることにつとめるべきではないか。
テレビが視聴者への影響力の大きさを考えて、「反原発」や「脱原発」の主張をあえて避けているのに対して、今や全家庭が購読しているとは限らない新聞のほうはやや微妙な立場をとっている。
私が購読しているのは地元の信濃毎日新聞だが、一週間ほど前には、長野県出身の報道写真家、樋口健二氏に取材し、「被爆労働の一端明るみに」というタイトルで、原発の稼働には危険な放射線を浴びることを覚悟しなければならない手作業があり、その末端の現場労働をになうのは、東電の正社員ではなく、下請け・孫請けの社員だったり、もしくはその社員ですらない派遣や契約といった形の労働者であることを伝えている。
樋口氏はすでにもう40年近くそうした原発被爆者150人ほどを取材。白血病で苦しみながら死んでいった若者や、原因不明の倦怠感で仕事を続けられなくなった労働者を見てきたという。
これまでこうした実態が必ずしも表に出てこなかったのは、親類・兄弟が原発関連の仕事についていて、声を上げにくかったことや、被爆で働き手を失った家族が困窮し、電力会社からお金を受け取り沈黙を強いられてきたという背景があるという。
今困難を強いられている福島第一原発の地元の町の人達にも「原発だより」の生活を送ってきた人は多いのだろう。
この記事には取材記者の署名がある。
かと思うと、つい昨日の新聞には、中曾根元総理に、「東日本大震災」の復興に関して、政府のなすべきことは、みたいなご意見を伺う記事が。
これは共同通信の配信なのだろうが、中曾根氏こそ、被爆国日本に「原子力平和利用」という思想を持ち込み、「原子力発電所」の建設に道筋を付けた正力松太郎氏の配下として働いた人物。
正力氏は既に故人なので、今回の原発事故という「国家犯罪」に最も重い責任を負わねばならない人物であるはずなのに。
自らの政治的働きが始まりとなって招いた今日の惨状を見るために「生かされていた」のだと思うのだが、そんな反省は何もないらしく、高みからご意見を述べている。
こうして新聞はバランスを取っているらしい。
テレビでは「日本がんばろう」、「日本一つになろう」とタレントに叫ばせている。
アジア・太平洋戦争敗戦後に「一億総懺悔」といって、開戦と敗戦の責任をあいまいにした状況と似てきた。
東電と国の犯罪を裁かずして、日本は一つにはなれない。