集団的自衛権行使容認の口実に使われるのが北東アジア情勢。
特に尖閣諸島をめぐっての中国とのせめぎあいに、日本国民の中にもいかにも中国が今にも日本を占領しにくるのではないかという「狂った不安」を持っている人もいる。
しかし以前にも書いたが、地図をよく見てほしい。尖閣諸島は中国、台湾、沖縄・八重山諸島の間にあって、「日本固有の領土である」などと息巻く根拠には乏しい位置にある島々だ。
むしろ台湾に近い。たまたま日本人が上陸して水産加工場などを作って利用していたことから日本が実効支配しているというにすぎない。
この海域でのいざこざは、いわばご近所の境界争いや、隣の家の音がうるさいだの、枝が我が家に張り出しているだののトラブルと同じ。
そんなことでいきなり隣に武器を持って怒鳴り込んでいきますか?まず話し合うでしょう。そうでないとそこでは暮らしていけない。
今や戦争やりたい狂になってしまっている安倍総理の集団的自衛権行使容認の暴走は、どんな小さなトラブルでも口実にして、交戦に出ようというところまで来ている。
それで迷惑し、直接的被害をこうむるのは今でも米軍基地負担で苦しんでいる沖縄の人達でしょう。こちらが攻撃すれば必ず相手も反撃してくる。
隣近所ならトラブルを避けて引っ越すという方法もある。家族構成が変わって、やがて隣家が、あるいは自分のほうが高齢になったり、空き家になったりで力関係に変化が訪れることもないわけではない。
しかし近隣諸国とはずっと地球がある限り付き合って行かなくてはならない。現代においては武力で決着をつけるということは両方が破滅するということになる。
『未来をひらく歴史』東アジア三国の近現代史(日本・中国・韓国=共同編集)高文研
という本を今読んでいる。
帯には「自国中心の歴史は21世紀には通用しない」とあり、開かれた歴史認識の共有をめざす日・中・韓三国の研究者、教師らが三年間・十回の国際会議を重ね、共同編集、執筆した近現代史入門書とある。
この書の特に日本軍が中国大陸に侵略し、中国人民に対してした残虐行為は百年経とうが、千年経とうが消えるものではなく、中国に同じことをされても日本は文句を言えない立場だと思わされた。
満州事変(1931年)後、100万を超える満州の農民と都市住民は戦火を逃れ、あるいは日本軍に帰順することを嫌って華北や南方へ難民となって流浪する運命に落とされた。
日本軍は食糧・軍需品などの供給、補充を軽視し、必要なものは現地で徴発する方針を取り、勝手に民家に侵入し略奪し、家を焼き払い、女性を強姦、抵抗する住民を殺害した。
日本は中国占領地で中国人を強制労働させて、資源開発や軍事施設の建設をさせた。
劣悪な労働環境のもと命を落す者も多く、「万人抗」と言われた埋葬地もある。
南京大虐殺(1937年11月)。
南京を占領した日本軍は大規模な掃討作戦を開始した。
1946年中国国民政府の南京軍事法廷の調査によると日本軍によって集団虐殺され、遺体焼却、証拠隠滅された者19万人余り、個別に虐殺され遺体を南京慈善団体が埋葬した者15万人余りとしている。
東京裁判判決書では「日本軍が占領してから最初の6週間に南京とその周辺で殺害された一般人と捕虜の総数は20万人以上であったことが示される」としている。
無差別爆撃。
中国抗戦の政治・軍事の中心だった重慶に対して戦略爆撃を行い、多数の市民が犠牲になった。
三光作戦。
日本軍は華北において中国共産党が解放した抗日根拠地に掃討作戦を実施。
すべての家屋を焼き尽くし、すべての人を殺し尽くし、すべての財物を奪い尽くすという民衆の生存条件を徹底的に奪う作戦を行った。
細菌戦・毒ガス戦・人体実験。
細菌・化学戦部隊である731部隊では、捕えた抗日活動家などを部隊に移送し、チフス、コレラ、などの細菌実験や人間の血と馬の血を交換する実験、生体解剖まで行い、元731部隊員の証言によると少なくとも3000人が犠牲になった。
毒ガス作戦も行い、戦後遺棄された毒ガスによる犠牲者も未だに絶えない。
これだけのことをしておいて「中国の脅威」を言うなど「盗人猛々しい」というのが今の日本だ。