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あみものと手仕事と旅の記録

ハチと侍女

2009-03-13 15:45:54 | ほん
新しいカテゴリ、作ってみました。「読んだ本の記録」コーナーです。

 先日、本棚の整理をしていたら、「おお、なつかしい!」なものから「こんなのいつ買ったんだ?」みたいなもの(最たるものが、岡村靖幸『純愛カウンセリング』。厳密に言えば、「岡村ちゃん、復活!」とうれしがって買った、てのは覚えてる)まで、どっさり。内容が思い出せないのは、まあ、その程度の本だったのであり、わたしの記憶力・読解力もその程度だったのでありってことでいいのかもしれない。
 けど、最近、図書館や人から借りて読むことが増えてきて、良い本に出会っても手元に残しておくことができないうえに、読書日記という手法も、これまでに何度も挫折しているため(根がズボラなので)、とりあえず、ここのスペースを利用してメモしていくことにしました。“レビュー”ではなく、あくまで、チョー個人的な感想・覚え書きのつもりですので(んでもって、これまたいつまで続くかアヤシイけど)、よろしくお願いします 

というわけで、第一弾は、

 『ハチはなぜ大量死したのか』
 (R.ジェイコブセン 著、中里京子 訳、福岡伸一 解説、文藝春秋、2009年)
  ★★★★ わたしの研究テーマが児童福祉における「resilience」という概念なんだけど、この用語が他分野でどんな使われ方をしてるのか気になって探しているときに見つけた本。2006年秋頃から、アメリカで発生しているミツバチの大量死の原因を探る科学ノンフィクション。膨大なデータと混乱する学説を丁寧に検証しつつ、ストーリーとしては非常にテンポ良く展開していきます。一生覚えられそうにない難しくて長い名前の農薬なんかも出てくるけれど、一気に読ませてしまうのは、著者の筆力と、訳者の質の高い日本語力のなせる技(「解説」が蛇足というか、訳者が「あとがき」で十分にその役割を果たしているのにもかかわらず、彼を引っ張り出してくるあたりに見え隠れする商売欲にゲンナリさせられるのと、致命的な誤植が数カ所あるのが残念)。 
 ハチのコロニーがある日突然、全滅してしまうという現象については、数年前にテレビで見て知っていたけれど、ハチに限らず、わたしたちに見えないレベルで確実に急速にさまざまなシステムの崩壊が始まっていることに慄然とさせられます。「食の安全」とか大きな話に限らず、「毎日、口にしたり身体につけたりするすべてのもの」に関心のある方におすすめ。
 ちなみに、resilienceは、一般に、「ダメージを受けた状態から、以前の(あるいは、それ以上に良好な)状態に戻ること」をさします(本書では「復元力」、解説では「リジリエンス」と訳されて、すいかは「レジリエンス」と訳しています)。これが児童福祉とどう関係があるのかについては、またこんど。

 『侍女の物語』
 (M.アトウッド 著、斉藤英治 訳、早川書房、2001年)
  ★★★★★ 上記の本のなかで紹介されていたので、読んでみました。環境汚染の影響のために人類の生殖能力が著しく低下した近未来で、キリスト教原理主義の政治支配下におかれた女(と男)たちの話。
 セクシュアリティの問題は、人間の尊厳と分かちがたくむすびついていて、他者が別の個人のそれを支配したり利用することはできない。そして、リプロダクティブヘルス・アンド・ライツ(生殖に関する健康と権利)は、女性にあると固く信じている。けれど、ここまで極限の舞台設定を見せられると「生命はいつ始まって、それは誰のものなのか」ってことが、口先だけで避けて通れる問題ではないことを思い知らされる。そして、おそらく、それは小説とは違うかたち(あるいは同じようなかたち)で、すでに、いろいろなところで起こっているのだろうということも。


って、初っぱなから気合い入れすぎ?
ま、そのくらインパクトのある2冊です。

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