古民家再生と土塗り壁のリフォームをしていますが、土壁の下地である「コマイ」の材料「ヨシ」について県内を調査しました。
土塗り壁を解体すると、縦横に無数に編んだコマイが姿を現わします
竹のようにも見えますが、左官屋さんは「ヨシ」と呼んでいるようです
切り口はこんな感じ・・
「ヨシ」はネットで調べると、一般に「アシ」と言われているそうです。「葦」は水辺に生える一年草です。
早速、新潟県内に点在する沼や潟へ「アシ」を探しに行きました・・・
新潟平野は「蒲原平野」と言われる通り、
蒲(がま)の原だったのでしょう・・
沼地ではまだ蒲が群生しています
これが「ヨシ」・・
要は、水辺に生えるススキですね・・・
蒲もヨシ(ススキ)も冬は地下茎が残って、春に芽吹いて、秋には枯れます。背丈ほどまで育ったとしても、茎の径は土塗り壁で使う「ヨシ」までは太りません。
蒲の茎の切り口です
芯の部分は詰まっていて、周辺に空気の通る筒状になっています
「ヨシ」の茎の切り口です
中心に空気の通る穴が開き、周辺はしっかりした筒状です
この形状を見て、前に見たモノにそっくりだと思ったのです。それは・・
現在、越前浜にて改修中の古民家です
茅葺の屋根の上に鉄板が張ってあります
茅(かや)を観察してみます
中心部に空気穴がある筒状です・・
下に落ちていた茅です。
どうやら「ヨシ」と同一のもののようです。
水辺に生えていた「ヨシ」は、この一帯では屋根吹き材である「茅(カヤ)」に使われていたようです。
山場では「カヤ畑」と称してススキを植えて村内の屋根葺き材用に育てていたそうですが、ひょっとしたらススキではなく「ヨシ」なのかも知れません。
では、土塗り壁に使う「ヨシ」とは一体何物なのでしょう?
道路を走っていると、何やら発見!
これってササ?タケ?・・・
倒れていたタケザサです。
茎の形状、径が似ています
大きさも手頃です
茎の切り口は、まさに土塗り壁で使う「ヨシ」そっくりです
林を侵食し始めてます・・
一面のタケザサ・・
これは「ヨシ畑」と言っても過言ではない
タケザサが大量にある事がわかました。土塗り壁の「コマイ」の材料としては申し分ないでしょう。
よくネットで、「竹」を割ってコマイにしていますが、竹を加工する手間を考えると高価になるのは必然です。
今まで、何件もの土塗り壁を解体してきましたが、竹で作られたコマイは土蔵くらいなもので、大半は「ヨシ」と呼ばれる竹状のモノでした。
土蔵の壁に使われている竹のコマイ
恐らくは、竹で作るコマイは高価で手間暇がかかり、手軽な「ヨシ」が一般的に使われていたのだと思われます。
「ヨシ」ならば、刈り取って干しておくだけだし、大量にあれば、こちらの方が有効でしょう。
県外からわざわざ運んでくるのも費用がかかります。地元のモノは地元で採れるモノを利用するというのが最善策でしょう。
ヨシが採れない地域ならば、竹を割って使えばいい。近くで採れるモノを最大限活用する・・それが先人の知恵なのです。
今回の探究の旅で、
「ヨシ」(水生のススキ)は茅の材料として
土塗り壁のコマイの材料である「ヨシ」はタケザサ
を使っていたのではないか?という結論になりました。
今後は自生のタケザサを使った土塗り壁を再現する実験をしてみたいものです。
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