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防衛国債を、将来の国の安全のために発行される公共事業財源である「建設国債」並みに扱うべきだと判断したのだが、立ちはだかるのが戦後レジームそのものである昭和22年施行の「財政法」である。

2023年01月06日 16時26分32秒 | 全般

以下は月刊誌Hanada2月号に掲載されている田村秀男の連載コラムからである。
日本の経済学者や経済評論家、新聞会社の経済部記者の殆どは財務省の受け売りの知識を書いているだけである。
だが彼は、そうではない少数派の一人である。
彼と同様に経済について真実を書いている人間の一人が高橋洋一であることは言及して来た通り。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。

「防衛国債」で戦後レジームからの脱却を
故安倍晋三元首相は亡くなる数ヵ月前、「防衛のための国債発行」を提起していた。
防衛国債を、将来の国の安全のために発行される公共事業財源である「建設国債」並みに扱うべきだと判断したのだが、立ちはだかるのが戦後レジームそのものである昭和22年施行の「財政法」である。 
同第4条は戦争を放棄した憲法第9条とセットになっており、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の指示に沿った。
財政法を起案した大蔵官僚は国債が戦争を引き起こす財源となると断じ、国の歳出を税収などの範囲内に留めるよう仕組んだ。
財務省が赤字国債の発行を制限し、増税や緊縮財政を正当化する。
それでも第4条は、公共事業費の財源には国債発行を認める条項を付けている。 
安倍氏は、第一次政権時代で「戦後レジームからの脱却」を唱えたが、第二次政権、さらに首相退陣後は念頭に置きつつも現実主義者で通した。 
2022年4月、防衛費増額問題が喫緊の課題として浮上した際、安倍氏は「財政法4条は占領時代の立法」との認識を示したが、改正には踏み込まなかった。
第二次安倍政権の本田悦朗元内閣官房参与は、「安倍さんは特例公債法を毎年制定するのではなく、まとめて複数年分制定しておけば、その期間中は、予算が通れば特例国債が出せるので不都合はないと考えていた」と証言する。 
防衛力増強は、中国の習近平体制3期目の今後5年のうちに勃発しかねない台湾有事という緊急性を帯びている。
1982年の英国対アルゼンチンのフォークランド紛争当時、M・サッチャー首相は戦時内閣から財務相を外した。
「鉄の女」はその理由について、英議会で「我々はどれほど費用が掛かるかといった観点から軍事を考えてはならない」と説明した。
当時の英国の緊急事態と単純に比較はできないとしても、増税主義の財務相や、「有識者」会議の増税案を真っ先に聞く耳の岸田首相の対応は平時の意識のままのようだ。 
岸田首相は財務省の影響を受けていると指摘されるのを嫌うとの見方もあるが、岸田氏に欠落するのは「戦後レジームからの脱却」思考である。
財務官僚はそこにつけ込む。 
財務省の意を受けて岸田首相との調整工作を担う木原誠二官房副長官は5年後に「安定財源」、即ち増税を先送りする方向で政府・与党の調整に入った。
いかにも財務官僚上がりの小細工だ。
当面は足りない分はつなぎ赤字国債、そしてその僞還のための消費税増税、税率は15%というコースが前提なのだろう。
戦後レジームからの脱却という信念や思想を持たない財務ニヒリズムである。こんな法匪(ほうひ)が日本を衰退させてきた。 
「防衛国債」発行は、世界最大の債権国日本でこそ可能な戦略的財源である。
有り余るカネを吸い上げ、防衛力増強を財源の呪縛から開放する。
円安トレントが始まった昨年はじめ以降、外準、対外純資産とも急増している。
2020年末に比ぺ、外準は2020年9月で34兆円以上、政府は外準の含み益を活かせば、防衛費の増額分6兆円程度をまるまる確保できる。
対外純資産は日本の金融余力を示す。
6月時点で2年末比94兆円増え、総額448兆円、国内総生産(GDP)の82%に達する。
くだんの有識者提言は、英国のトラス前政権が大型減税案を掲げた途端に金融市場が崩壊しかけた例を引き合いに出し、わが国でも同様の虞(おそ)れがあると警告した。
英国はGDP比で約2割もの対外純負債を抱えており、海外の投機勢力に翻弄される。
債権大国日本を債務国英国と混同する自虐論である。
防衛関連投資は経済力挽回の起爆剤になりうる。
米国を見てみればよい。
米国の軍事支出は日本の約25倍にもなるが、防衛関連の研究開発は60倍以上、年間で10兆円超だ。
研究開発を担うのが米国防総省傘下の国防高等研究計画局(DARPA)で、インターネットなど数々のイノベーションを創出してきた。
情報技術(IT)などハイテクは軍民両用であり、軍事技術開発がそのまま経済全体の活カヘと波及する。 
モノづくり日本の創意工夫は目覚ましい。
戦闘機F2では炭素繊維、車載用衝突防止レーダーなどだ。
防衛国債によってカネの憂(うれ)いをなくし、ハイテクを中心に日本独自のイノベーションを湧き起こす物語が始まる。 
産業基盤が充実すれば経済の成長をもたらし、企業は付加価値を高め、雇用を拡大し、国民の所得が増える。
防衛国債を、「特例」と称される鬼っ子扱いの赤字国債ではなく、建設国債と同等に位置づける。
それは、戦後レジームからの脱却による日本再生の道なのだ。

産経新聞特別記者


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