仙台市と日本IBMやシャープ、カゴメなど約20社は、東日本大震災の被災農地に大規模太陽光発電所(メガソーラー)を建設、その電力で2012年秋に国内最大級の水耕栽培・食品加工の事業を始める検討に入った。年内にも運営会社を設立する。
仙台市は31日に震災復興計画の素案を発表、自然エネルギーを活用する「エコタウン」をつくる考えを示した。新事業はこの計画の一つの核になる見通し。民間企業主導による農業再生、地域復興が動き出す。(被災農地は3面「きょうのことば」参照)
参加企業は日本IBM、シャープ、カゴメ、三井物産、伊藤忠商事、東北電力、セブンーイレブン・ジャパン、ヨークベニマルや地元の農業生産法人など。近く発表する。
仙台市内の沿岸部、若林区で津波の被害を受けた農地で新事業を始める。対象地は東京ドーム約5個に相当する約23ヘクタール。塩分を除去して再び農地として使うには多額の費用と時間がかかるため、土を使わない水耕栽培を導入する。カゴメが水耕栽培のノウハウを提供。
新会社は延べ床面積約10ヘクタールの野菜生産工場と1ヘクタールの加工工場を建設、野菜づくりから加工までを一貫して手掛ける。
工場では年間約2000トンの野菜を生産。加工した野菜はセブンやヨークベニマルなどで販売する。年間25億円強の売り上げを見込む。
生産工場や加工工場は新たに建設する出力約4000キロワットでつくる電気や、もみ殻をボイラーで燃やして生み出す熱などで稼働させる。日本IBMはIT(情報技術)を使って各種エネルギーの効率を高める仕組を提供する。
事業費は約100億円で、日本政策金融公庫と日本政策投資銀行が融資する方向。仙台市は一部に国の第3次補正予算も充てたい考えだ。
農地に工場を建設することになるため、仙台市は政府に特区を申請して実現する方針。対象地を持つ農家と仙台市が長期の賃貸借契約を結び、事業収入を賃料に充てる。震災を機に廃業を考えている農家と今後、本格的に交渉を進める。
仙台市は震災復興計画素案で基本理念に「新次元の防災・環境都市」を掲げた。15年度までの5ヵ年計画で、自然エネルギーを活用したエコタウンづくりを進める考えを示した。
復興住宅を建設する地域などに自然エネルギーに加え、スマートグリッド(次世代送電網)やコージェネレーション (熱電併給)設備を導入する考え。電気自動車やプラグインハイブリッド車の普及も促進する。