新興国の通貨安は、これまで国外から流れ込んできたマネーの急速な巻き戻しが引き起こしている。通貨安は自国の産業の競争力を高める側面もあるが、資本流出による外貨不足で信用収縮が起き、経済が停滞する事態につながるおそれがある。
韓国は外貨借り入れの3割強を欧州から調達している。足元では一部でフランスやイタリアの銀行が借り換え(ロールオーバー)に応じず、資金を回収する動きが出ている。借り換えができた場合でも金利の上昇傾向が鮮明だ。
市場からドル資金を取りにくくなる状況が続けば、外貨借り入れの返済負担増などを通じて銀行や一般企業の財務は悪化する。銀行はウォン建ても含めて融資に慎重になり、企業も投資を手控えるなど経済活動は萎縮しかねない。
韓国は1997年に通貨危機、2008年にはりーマンーショックでドル不足に見舞われただけに、警戒感が強い。
ブラジルでは9月1日から23日まで国外との資金移動が80億ドルの流入超と、今のところドル不足の兆候はみえない。
取引量が大きい為替先物市場でレアルの先安観が広がり、現物市場でもレアル安が進んでいる形だ。課税導入をにらんだ対策として、投資家が先物市場でドル売り持ちの解消を進めたことがレアル安の一因だとする分析もある。
ただ政府・中央銀行はレアルの行き過ぎた下落が輸入物価の上昇を通じてインフレ圧力を強め、内需低迷の引き金になると懸念している。企業の外貨建て債務の返済負担が重くなる点からも通貨安を経済の不安材料とみている。