文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

新聞各紙が、世界の歴史の流れ、進歩、発展とはいかなるものかをまるで理解していない-という状態を端的に示している、と言わざるを得ない。

2025年03月03日 22時22分03秒 | 全般
また、このパリ講和会議で日本が提案した人種差別撤廃案は、賛成が反対を上回ったが、議長のウィルソン大統領の裁定で成立しなかった。
2019年02月24日

社説を含めて田村秀男氏、酒井信彦氏の論文は、今、産経新聞が、今、日本で一番のクオリティ・ペーパーである事を証明していたのである。
先ず、酒井信彦氏の論文を産経新聞を購読していない人達に御紹介する。
見出し以外の文中強調は私。

パリ講和会議100年、なぜ報道しないのか
元東京大学史料編纂所教授酒井信彦
今年の1月18日は、いかなる日であったか。
それは第一次世界大戦終結後に行われたパリ講和会議が100年前に開幕した日なのである。
世界史的に極めて記念すべき日なのに、これを報道した新聞は全くなかったようだ。 
パリ講和会議で決められた事項で最も重要なものは、米国のウィルソン大統領が提唱していた民族自決・民族独立の原則に基づいて、欧州に、北はフィンランドから南はユーゴスラビアに至る独立国が一挙に出現したことである。 
それは同時に、ドイツ、オーストリア=ハンガリー、口シア、トルコー4つの帝国が滅亡したことでもあった。
すなわち、帝国の下で抑圧されていた民族が独立するという歴史の大きな進歩が実現したわけである。
ただし、この時に独立したのは欧州の国だけだった。
その後、中東の旧トルコ帝国領から独立国が出てくるが、アジアやアフリカについては、「民族自決・民族独立の原則」は基本的に適用されず、広範に植民地が存続することになった。 

また、このパリ講和会議で日本が提案した人種差別撤廃案は、賛成が反対を上回ったが、議長のウィルソン大統領の裁定で成立しなかった。
米国自身が、深刻な人種差別問題を抱えており、まもなく日本人移民も禁止された。 
しかしその後、第二次世界大戦を契機に、数百年も続いてきた植民地支配体制が崩壊し、アジア・アフリカに実に多数の独立国が誕生することになった。
さらに、アフリカの独立に影響されて、米国の人種差別問題も改善されるようになった。 
ただ、民族独立の動きはその後も続く。
それは今から約30年前、ソビエト連邦(ソ連)が崩壊したことで、連邦を構成していた15の共和国が独立した。
それに続いて、チェコとスロバキアが分離し、ユーゴスラビアは内戦を経て7ヵ国に分裂した。 
それでもなお、独立すべき民族が抑圧されている地域がある。
それはわが国の目の前にある中華人民共和国に他ならない。 
中国は70年前、モンゴル人、ウイグル人、チベット人の領土を軍事力で併合することで成立した。
その3民族の領域は500万平方キロメートルに達するから、中国の面積960万平方キロメートルの半分以上である。 
世界史的に極めて重要なパリ講和会議の開催日について、新聞各紙がこれほどまでに無関心なのはなぜか。 
新聞各紙が、世界の歴史の流れ、進歩、発展とはいかなるものかをまるで理解していない-という状態を端的に示している、と言わざるを得ない。  
   

〈さかい・のぶひこ〉昭和18年、川崎市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東京大学史料編纂所で『大日本史料』の編纂に従事。


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