このブログではすでに「ドライブ・マイ・カー」の広島ロケ地めぐりを紹介しましたが、やっと映画も鑑賞することができました。上映時間は3時間。普通は2時間弱なのでそんな長い映画を飽きることなく見れるか、トイレは大丈夫か、など少し身構えました。結果は3時間はあっという間、さすがアカデミー賞国際長編映画賞を取っただけのことはありました。美しい映像と紡がれる日本語・韓国語・中国の一言一言、そして手話での表現、役者の表情、登場するクルマ、赤色のサーブのエンジン音までが演じているように感じられました。
この場であらすじを解説するつもりはありませんが、濱口竜介監督が表現したかったテーマは何だったのか?映画鑑賞後にそんな気持ちになることは滅多にないのですが、考えてしまいました。原作は村上春樹さんの短編集『女のいない男たち』に収録されている「ドライブ・マイ・カー」、「シェエラザード」など。村上春樹さんの小説など読んだことはないのですが、これは短編集ということで早速読んでみました。原作に忠実な部分とそうでないところ。これがこの映画の脚本の妙だと思いますが、そんな比較をしながら映画を見たのも初めてです。主人公の家福の西島秀俊、女性ドライバーの三浦透子、高槻役の岡田将生らのキャスティングもさすがです。妻役霧島れいかは「シェエラザード」の主婦とはイメージが違い過ぎますが、語る物語は原作の通りです。
私は映画の魅力の一つは音楽かと思っていますが、この映画ではクルマのカセットテープから流れてくるのは台詞のみ。SEXの最中のやつ目ウナギの物語も嫌な感じがしません。そし何よりもサーブ900がいいですね。原作は黄色ですが映画は赤色。存在感があります。映画にあうクルマは知っている限りでは、カブトムシのフォルクスワーゲン、ミニクーパーです。どちらも乗っていましたが、今でもマニュアル車独特のエンジン音は忘れられません。そして手話だけで演じる韓国人俳優、途中とエンディングに登場する犬。すべて監督のこだわりでしょうか。久しぶりに出会った素晴らしい映画でした。