ルンバがどこからかパイプ式のハンガーを2つ、ソファーでゴロンとしている私の前へ持ってきた。
(何? 何?) と思うのだが知らんぷりの私。
その姿を見て彼女のオネガイ攻撃が始まった。
「金属のパイプを締めているプラスチックの部品が回らないのぉ~~❤」
何かオネガイがある時だけ語尾に付く❤マークが目の前をチラチラと飛ぶ。
その手は食わんと不機嫌な顔を崩さない私。
重い服をドッサリ掛けたので負荷に耐えられず、パイプの片側だけが下がり、本来床面と平行になっているはずのパイプが斜めになっている。
オンナが着飾るのはオトコに抱いて欲しいからだろうと思うのだが、何故か服を次々と買うルンバ。
「着ない服は捨てたら・・・・・」と云ったら、「このハンガーに掛けていたのはお父さんの礼服とかスーツだよ」と云われてギャフン。
仕方なしに思い腰を上げてプラスチック部分の締め具をデヤーッと回転させて緩めようとするのだが、びくともしない。
この頑張りで血圧が50は上がったと思うのだが手が痛くなるばかり。
ヘロヘロなって一時休戦。この年になっての血圧上昇は命に係わるからだ。
ルンバはゴム手袋を出してきた。これを使って再チャレンジしろと優しそうな鬼の目が云っている。
それを使っての奮闘も虚しく二回目の休戦。
色々と考えた末、工具箱の中にパイプレンチがあるのを思い出した。
今度はこれを使ってデヤーッと掛け声。途端に動いた締め具の感触。
「お母さん、動いたよ。弛んだよ」と云った途端、「やったぁ~~」と嬉しそうな声。
と、同時に私の役目は終了。
部屋の中に漂っていた❤の気配は消え去り、重苦しい疲れだけが残った。