陸中海岸の北端、黒埼展望台は1m先も見えない濃霧。道がどちらへ曲がっているのかも判らないのでナビだけが頼りだ。
それでも足跡を残すと云って道路の終点で車から降りたT代さん。大丈夫なのだろうかとかなり不安になった頃やっと霧の中から戻ってきた。
足跡=マーキング=野ションなのかと確認したかったが・・・・・云えなかった。
有名な北山崎と鵜の巣の断崖は、かろうじて断崖下の海が確認できる程度。
Pから断崖までの霧に包まれた遊歩道が怖くて彼女を頼った。
山王岩は、焼失した亡父の部屋に掛けてあった油絵に描かれていた場所だ。
それを眺めながら静かに父を想った。
三陸鉄道を走る列車が撮りたいと言い出した彼女を何とか説得して諦めさせ向かったT代さんが予約した今夜の宿は、何故か「休暇村宮古」
休暇村と云うからには和室だ。それも多分二人部屋。
もしかしたら布団を並べて寝るのだろうか。
きっとそうだ、そうに違いない。
それなら枕投げをしよう。追いかけっこをして抱きついて偶然を装って沢山触わろう。
一応用意したモッコリ型勝負パンツ。
出番は今夜しかない。
と思ったのだがチエックイン手続きをした彼女はキーを2本持って来た。
「あれっ?別々の部屋なの?」と云う私に「当然別々よ」と冷たい声。
何だ、そうなのか。
頑張らなくても良いと知って、緊張が解けた。