数センチ雪が降り冬らしい景色になった。
歩くと足の下からギュッギュツと懐かしい音がした。
どこかのオッチャンがストックを突いてウォーキングしていた。
欲しいものがあったのでルンバに「買物へ行こう」と誘ったのだが、あまり乗り気では無い。
でも最近ウォーキングをしていないので「付いていくだけなら」と変な理由を付けて車に乗り込んだ。
もしかしたら「付いていく」だけなのだから支払いは任せたと云うことなのだろうか。
スーパー内をウォーキング代わりに歩くつもりの彼女は何も持たずに店内へ。
だから仕方なく私がカートを押した。
私を見つけたルンバは欲しいものを手に持っては私の押している籠に入れる。
(何だ けっこう欲しいものがあるじゃん) と思いながらルンバの後ろを付いていくのだがルンバは何故か私を無視して違うオッチャンに近付いて行った。
もしかしたら自分のオッチャンと他人のオッチャンを間違っているのだろうか。
だから「お母さん」と声を掛けたのだが周り中が「お母さん」なので皆がこちらを振り向いた。
私の「お母さん」はどんどん他人のオッチャンに近付き、抱えている野菜を他人のカートの籠に入れる勢いだ。
気が気では無いけれど、でも少し面白そうだ。
突然 籠に白菜とエノキを入れられた他人のオッチャンの驚いた顔が目に浮かぶ。
私は「お母さん」と呼ぶのをやめた。