憂鬱な定期の検査日。
再発が確認されたら、また手術の宣告を受けるだろう。
沈み込みそうな気持ちを抑えて前日から念入りな準備。
保険証に診察券、診察予約票にお薬手帳。
そしてマスクを忘れないようにとテーブルに並べて浴室へ。
丁寧にヒゲを剃り、普段は手で柔らかく擦りつけるボディ用洗剤を垢こすり用のザラザラしたタオルに付けて敏感なジェームスを痛みに耐えて磨いた。
仕上げはヘアーリンス。肌触りがスベスベになりフローラルの香りが芳(かぐわ)しい。
病院の待合室もソーシャルディスタンスだ。
前回の検査助手は男性の看護師さんだったが、今回は何とスタイルの良い美人の看護師さん。
ジェームスを消毒する手触りや握る力の具合も丁度良くて、一瞬検査であることを忘れそうになり、ジェームスに「剣豪のような無の境地」になるようにと何度も言い聞かせた。
で、結果はセーフ。
先生からは塩分制限を続けるように言い渡され、マスク集団がウロウロする病院から爽やかな風が流れる世界へと戻った。