キッチンが空くのを待っていたら、ルンバが後ろに立っている私に気が付いて振り返り
「怒っているの?」と云う。
私の顔が不機嫌な感じに見えたのかも知れない。
私が怒った時はこんな顔だと、鬼の形相で精一杯怖い顔をして見せたら逆に笑われた。
「お父さん、節分が終わったからもう鬼は山に帰ったよ」と云う。
ルンバの中では、普段鬼は山にいることになっているらしい。
(鬼は山に居るのではなく目の前にいる) と思うのだが、それは言えない。
スリスリが部屋に入ってきたので、ルンバは早速私の変顔を教えている。
「節分が終わって鬼は山に帰ったのにさぁ……」なんて説明している。
スリスリの方が、まだマトモな思考回路を持っているので「鬼が山に帰った」ことに疑問を感じているようだ。
「鬼は何処にいるの?」とスリスリが私に訊くので、ルンバから見えない位置で
(ここにいる) とルンバを指さした。
スリスリは納得したのか、それとも見てはいけないものを見たと判断したのか視線を逸らし何も見なかったことにした。