私は昨年始めて、宇都宮の東武百貨店に出店したのだが、大変苦戦した。この地ほど値切られたのは始めてであった。来るお客さん、来るお客さんが必ず「もう少し安くならないの?」と合言葉のように言う。びっくりした。デパートでこんなに来る人すべてに値切られるのは以上だ。デパートの担当者に聞いてみると「そうなんですよ、ここの人は平気でまけろというんです。安売りで有名なコジマ電気の発祥の地で、ディスカウントしてもらうのが当たり前になっているんです。」と返事が返ってきた。本当にびっくりした。また、高級な竹製品になじみが薄く、竹製品といえば日常雑貨と思っているふしがある。そんな、状況の中で、ただひたすら、竹製品の良さ、世界のどこに出しても一級品として通用するおしゃれなバッグで、洋服を引っ掛けたり、竹がささくれて来るような二級品ではないことを説明した。 しかし、なかなかすぐに答えを出すことは難しく苦戦して一年目を終えた。
そんな昨年の種まきが今年になって少しずつ、芽を出してくれた。今日最後のお客様もその一人で、「昨年見たときはデパートの積み立てで頂いた商品券を使ったばかりで、欲しかったが買えなかった。一年越しで我慢して、この九州展まで今年の商品券を使わないで待っていたのよ。」とおっしゃってくれた。嬉しかった。本当に嬉しい。こんな形でのお客様との出会いがある限りこの仕事を続けていけると思う。正直に一生懸命良い作品を作り続けることだけが我々モノ作りの生きる道だと思う。