デイジー・ウェイドマン著 幾島幸子訳『ハーバードからの贈り物』(ランダムハウス講談社)を読んだ。
この本は、ハーバードのビジネススクール(経営大学院)で教えている教授陣が、学生に対し、自身の経験をもとに人生とは、成功とは、リーダーシップとはなどについて語ったものをまとめた本である。それは、ハーバードMBA学生だけに通じるアカデミックなものではなく、普遍・本質的なものだという感想を持ったので、印象に残ったところを紹介したい。就職とはなんなのか、仕事とはなんなのか。この就職活動の時期、内定をもらっている人でも不安な気持ちを抱いている人は多いだろう。参考になると思う。
◆デイヴィッド.E.ベル『同窓会』
ハーバードビジネススクール卒業生には、5年ごとに同窓会の案内状がくるらしい。しかし、この著者ベル教授は、いかないほうが良いと助言している。当然、「今何やっているのか?」という話題になる。自分と周囲を比べ、自分の乗っている車と隣に駐車している車を比べ、中には屈辱に感じる人間がいるだろうから。
印象に残ったこと
●目的の幅の広さ・狭さとリスクの高低は一般的に相関関係にあり、目的の幅を狭めるほどリスクは高くなるのだ。
●三つの戦略をアドバイスしている
①自分がどんな見返りを求めるかという点から仕事を選ぶこと。
②成功の意味をあまり狭くしないこと。
③長期的な展望を持つこと。
しかし、上記より大切な心得は、バランス感覚を失わないこと。リスクを冒して目標を目指すのはいいが、意固地になってそれを追い求め、自分を惨めにするのだけはやめよう。
自分で自分にタイムリミットを設けること。リスクを冒して夢・目的を目指してきたにも関らず、まだ、それを達成できていなかったら潔く身を引くこと。そして二度と振り返らないこと。その後まもなくあなたの元に25年目の同窓会の案内状が届くだろう。そうしたら行ってみてもいいかもしれない。
◆ナンシー.F.ケーン『完璧を求めるな』
著者である彼女の父親は厳格な教育者で、とても彼女はその父を尊敬していたという。しかし、著者の父親は、心不全で急に他界してしてしまう。そのとき彼女は父のことを正面から考え、自分に自信を持っていなかったからこその裏返しの厳しさであることに気づいたという。父の長所や功績が見えるとともに短所や失敗も見えてきたという。
リーダーシップの要は自分が手にした権力をどう使うか。そしてその権力および自分自身をどうとらえるかにある。私の話の最大の目的は、あなたが今後の人生においてこれらの問いについてどう考えたらいいのか、そのためのヒントを示して手助けすることである。
自分という人間を客観的に評価する、ということをアドバイスしたい。
長所だけでなく短所にも目を向けよう。間違いを認め、そこから生じる恥に足元をすくわれないこと~略~自分も周囲の人も本来の意味で「完璧」だというようにするのだ。
欠点がなく、非の打ち所がないという意味ではなく、本質的なものは何も欠けていない全体的な存在という意味である。それを完璧にするのに簡単な方法が一つある。あなたの記憶と今までに体験したことすべて呼び起こし、ちょうど写真をテーブルに並べるように心の中に並べてみよう。きっとあなた自身についての新しいイメージが、豊かで自然なあなたという人間を余すところなく映し出すイメージが、浮かんでくるに違いない。~略~
あなたも自分自身のことを考えてみて欲しい。私の父も私も、あるいはリーダーと呼ばれる全ての人がそうであるように複雑で、聡明で、欠点もある完全な人間なのだと。