自己と他者 

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松下幸之助『人間としての成功』

2006-05-28 16:56:07 | 小説以外 

松下幸之助『人間としての成功』(PHP文庫)を読んだ。

 松下幸之助氏が人間について語るとき、お互いといった言葉が頭につく。「お互い人間~」というように。最終章のテーマは「素直な心になる」である。この本は松下幸之助氏が考える人間としての成功、人間の成長について自身の経験におけるエピソードを交えながら考察しているのだが、どのようにすれば大勢いる人間が一人ひとり幸せになれるのか。成功、成長を求めていくことができるのか。自身が他の人間に対し、どういう意識を持ち、他者とどのような関係を望み、結ぶことで達成できると考えているのか、が書かれている。   

難しい言葉は皆無。けれど、「お互い人間として」の大切な言葉、考え方は多数ある。

P.183

「~略~最後に人間としてもつべき基本の心、人間をして人間たらしめようとする心というものについてのべてみたいと思います。

それは何かといいますと、”素直な心”というものです。お互い人間が人間としての成功を得ていくために一番大事なことは、それぞれの本質、特質というものがありのままに把握され、その持ち味がそのまま発揮されることだと思いますが、そのためにはどうしても素直な心をというものがなければならないと思うからです。

~略~たんに、人にさかわらず、従順であるということではありません。そうではなくして、何ものにもとらわれることのない、かたよらない心であり、また物事の真実を見きわめて、これに従おうとする心のことです。

~略~いちばん大切なことは、お互い人間それぞれにはもともと素直な心になる素地があるということを、はっきり認識することだと思います。

~略~碁をならっている人が初段になるためには、だいたい一万回ぐらいは碁を打たなければならないということです。寝てもさめても碁のことを思い、またじっさい回を重ねて打ってはじめて実力がついてくるという。

 素直な心を会得しようという場合でも、これと同じ事がいえるのではないでしょうか。すなわち、素直な心になりたいということをまず心に念じ、朝に夕に、そういう思いをあらたにしていくということでしょう。そして、つねに自分をふり返り、自分の言動が果たして私心にとらわれていたり、一つの見方にかたよっていなかったかどうかを反省していく。そういう心がけを重ねていってはじめて、素直な心が高まっていくのではないかと思うのです。~略~」