村上世彰氏『公開企業の使命』(ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー2003 6月号)を読んだ。
難しい部分もあったが、要は上場して直接金融(株式公開・上場)で資金調達している企業は、①株主(出資者)に対して利益を還元するか、②事業の成長に投資することは義務である、ということだ。
日本の上場企業はPBR(株価純資産倍率)1を大きく下回る企業が多いと指摘し、資産が有効活用されていない根拠に上げている。
企業価値・株主価値向上の方向性は突き詰めると2つしかないとしている。①事業拡大・発展によって将来の利益やキャッシュフローを増大させる。 ②資産効率を高める。
⇒ここは、八城政基氏が『日本の経営 アメリカの経営』(日経ビジネス人文庫)で言っていたことと同じ。資本主義社会において企業がマーケットを利用して、資金調達をし、事業を営んでいるからには、義務であるということだろう。日本の企業は、株式持合い、系列会社という形でその義務を果たしていなかったということである。
確かに資産を食いつぶすだけでは、公開企業としての資格はない。
村上氏はこの義務がはたせないならば、公開を続けるべきか、否かを再検討するべきだと言っているのである。いわゆる資本の論理だが、正当性があることを言っている。こうした論理を背景とした村上氏の行動は評価できるといえる。
マスメディアはフェアであるべきだ。法律に違反していたことは確かだが、裁くのはマスメディアの仕事ではない。マスメディアは、視聴率獲得に村上世彰氏、堀江貴文氏をさんざん利用したのだから、公平にかつ事実に基づいて、悪の部分ばかりではなく、評価できる部分もきちんと報道すべきである。
海外メディア(といっても日本で伝えるのはほぼアメリカのマスメディア⇒ニューヨーク・タイムズとか)では村上氏のことは客観的な視点で評価している。かれらは日本の株式市場が再び極度に閉鎖的になることを危惧している。
しかも私には、彼ら(アメリカ・マスメディア・アメリカ人投資家)は村上氏の犯した行為よりもむしろ、日本のマスメディアが村上氏の批判部分ばかり取り上げて、評価できる部分を正当に報道しないことからくる市場の閉塞感を危惧しているように思える。
日本は法治国家なので、法律というルールに従わなければならない。しかし、日本の資本市場はそのルールによって外国人投資家にも門戸は開かれている。日本の上場企業(東証一部)の株を保有している外国人(機関含む)投資家は、日本の個人投資家より多いだろう。
予断だが、だから外国人投資家が買い越したのか、売り越したのかによって、日本の市場に、ものすごく大きな影響を与える。(さらに話はそれるが、監査法人がきちんと機能せず、見逃したり、企業の言いなり、もしくは、企業と共謀して、有価証券報告書虚偽記載を行っているほうがよっぽど問題だ。資本主義社会の根幹である、会計制度をぶっ壊してるのだから。TVメディアは、なぜ頻繁にこのようなことが起こるのか、村上氏より堀江氏よりもっと取材して、もっと報道するべきである。)
彼らがきちんと株式市場が機能して欲しいと思うのは当然である。彼らの資金が日本の上場企業の活動資金になっている面があるのだから。それも忘れてはならない事実である。